ケルトを色濃く残すアーサー王の伝説

「アーサー王伝説」(リチャード・キャヴェンディッシュ著)

最近はケルトに興味を持っているのですが、そこに登場してくる象徴的な存在としてアーサー王の伝説があります。このアーサー王について、私自身はほとんど知らずに来ました。基本ヨーロッパの話なので興味がそれほどわかなかったわけで、40年前の学生時代に「エクスカリバー」という映画を見たものの、それがアーサー王の話だったとは、恥ずかしながらつい最近まで知りませんでした(笑)

そんなレベルの私ですがケルトに興味を持ち、アーサー王に関することを本で調べると、神秘的であり聖杯探求の物語もある。そういえば「エクスカリバー」にもそんな話があったなと。映画の印象は、岩に突き刺さった剣や湖から女神の手で剣が差し出される場面が強く印象に残っています。後年になりこうした象徴的なものに惹かれて、ちょっと調べてみようという気になったのです。

アーサー王とはブリテンの伝説の王。岩に突き刺さった剣を抜いたことにより正統な王であるということが認められ、さらには湖の女神からエクスカリバーという象徴的な剣を授かり、王国を築いた。ブレーンとして魔術師マーリンを従え、摩訶不思議な世界にも通じ、さらに有名な「円卓の騎士」という形式も作った。そして晩年はキリスト教の至宝である聖杯を探究するわけですが、盟友である騎士ランスロットが妃であるギネヴィアとの不倫関係にあり、アーサーの幸福に影を落とし、最終的には嫡子モルドレッドに裏切られ、自ら失意の元、アヴァロン島に運ばれていく・・・。アーサー王は死んだわけではなく、困難な世が到来したときに、この世界に再び戻ってくると信じられている英雄なのです。

このアーサー王の話は12世紀のヨーロッパに登場するのですが、その背景には色濃くケルトの神話や伝説が反映されていると言われています。アーサー王の物語に登場する騎士をはじめとする英雄たちは『人間界をはなれ、神々や妖精、未知の正体不明の生き物が棲む異世や、ふしぎな危険きわまる国へ冒険を求め』、その異界において『偉大な武勲を立てたり、測りしれない価値をもつ何ものかを手に入れる』、それはドラゴンや怪物の退治であり、捕らわれた人の解放、美しい花嫁や類まれな宝物を手にいれたり、聖杯により生の奥義を見出すなど超人的な活躍を見せます(と言いながら実際のアーサー王の話は読んではいないのですが・・・)。このアーサー王にまつわるベースにはケルトの伝説が反映されているというのです。

そんなこともあり、私は「アーサー王伝説」(リチャード・キャヴェンディッシュ著・高市順一郎・訳)という本を古本屋で見つけ、分厚い本なのですが手に取ってみたわけです。もともと馴染みがないアーサー王の話なので、このようなそれを論じた本は、翻訳ということも相まってなかなか読むのに苦労もしたのですが、読み終えると細かい部分は忘れてしまっても、なんとなくアーサー王に親しみを感じてきます。多神教のケルトと一神教のキリスト教が融合した時代における騎士と王の不思議な伝説は、海の遥か向こうの話でもそこに何があるのだろうか?と憧れと興味を少しばかり持つようになってきます。

『異世についてのケルト伝承は、中世のアーサー王物語に強大な影響を与えた』たとえば、『エクスカリバーはケルトの伝承でアヴァロン島で造られたという異世の剣』であり、『男らしさや行動、戦争、また激烈なエネルギー放出の意味を持っている。この剣が鍛えられた鉄床は、女性的、受動的、強情のもので、大地と物質のシンボルであり、存在の基盤である。』この鉄床が置かれていた岩は『王位と聖なる石を結びつけて考えるケルト伝承』に関係があると、この本では書かれています。

ケルトには「リア・ヴァイル(運命の石)」という伝説がアイルランドあるようで、正統な王がその石にすわると石が叫び声をあげるので、新しい王位継承者が正統かどうかを試すために用いられたというのです。それはキリスト教にも影響を与え、イングランドの王エドワード一世がロンドンに持ち帰り、現在、ウエストミンスター・アビーの載冠式用の椅子にはめ込まれていると言われていたりするそうです。ただ、その石は違うという説もあったりするそうなので、何がほんとかということは断言できないのですが。

アリマタヤのヨセフがイエス・キリストの血を受けた聖杯をイギリスに持ち帰り、アーサー王の伝説におけるアヴァロン島ではないかとされているグラストンベリーの、これまたシンボリックなグラストンベリー・トールのふもとのどこかに埋めたという伝説があり、そこがチャリス・ウェルなのではないかと言われている、まことしやかな都市伝説もあり、そうしたことがまたアーサー王伝説を魅力的にしている要素の一つだと思うのです。

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