ケルトと日本は世界の両耳飾りの関係性、「ケルトの魂」を読む

「ケルトの魂」鶴岡真弓対談集(平凡社)

ケルト研究における日本の第一人者と言えば鶴岡真弓氏でしょう。これまで鶴岡氏の本は数冊読んでいますが、ケルト文化の特徴を、わかりやすく、かつ、そうなんだと感じさてくれるよう的確にまとめているように感じていました。この対談集は様々な媒体で行ってきたものをまとめたものですが、その対談者のメンバーがすごい。

ケルト音楽で世界的なミュージシャンのエンヤ、日本を代表するTOPミュージシャンのユーミン、女優の山口智子、個性派俳優の佐野史郎、宗教学者の中沢新一、民俗学者の赤阪憲雄、生命誌研究者の中村圭子とそうそうたるメンバーと対談をしているのです。

ジャンルを整理すれば、歴史、音楽、思想、宗教、神話、文学、民俗、写真、演劇、芸能、儀礼、考古学、造形美術、デザイン、錬金術、生命・・・と実に幅広いわけでそれらが、ケルトという視点と交わり絡み合う。つまりケルトの秘密には、多様なものを包括するものがあるということでしょう。

本の帯には「ケルトと日本は世界の両耳飾り」と書かれているように、鶴岡氏はケルトと日本をユーロ=アジア世界の極みとして、その共通点をみています。それは、本書でも出てきたように岡本太郎が注目した縄文文化への着目であります。

『「ケルト文化」と「日本文化」が、ユーラシア大陸をはさんで「二つの極み」にあるという地理上の配置は偶然であるだろう。しかし、太古から人類の芸術表現や信仰を深く映し出す、合わせ鏡の関係がみいだされるのではないだろうか。私は極西の島国から、一万キロのパースペクティブで、自分が生まれた極東(ファイースト)の島国を見はるかしたとき、この二極かの「古層」を意識するようになった。・・・・・・その懐に潜入していくと、誰の眼にもとまらなかった、地球の反対側で芽を出す双葉が現れる。そして、二つの極みにはさまれた広大な「ユーロ=アジア世界」に生命力、再生力の共振関係が発見されるのだ。』(※「ケルトの魂」鶴岡真弓対談集(平凡社)から引用)

ここで面白いなと思ったのが、ビートルズのラスト・アルバム「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」を引き合いに出して、世界史におけるそれとは、2000年間放浪の民となったユダヤ人の「ディアスポラ」と、移民を多く輩出したアイルランドの「エグザイル」について述べている部分。ユダヤ人は優秀な人材を輩出している稀有な民族であるわけですが、アイルランド移民も多くの優秀な人材を出しています。

その2つの共通点として流浪、放浪というのがありますが、ここから、私が勝手に本から感じ、思うことは鶴岡氏が言うように、ケルトと共通点がある日本はというと、世界で唯一2000年以上、国の歴史が続く(天皇)世界的にも稀有な国(世界で最も古い国が日本)。一方は、流浪や抑圧を強いられた民であり、日本はその逆。イスラエルに行った時に、日本との陰陽の関係性を感じたのですが、まだ足を踏み入れていないアイルランドも別の点で、陰陽の関係性を感じることができるのかな・・・なんて密かに思っています。

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