聖剣エクスカリバー!アーサー王は死んでない?

「アーサー王伝説」ジェフリー・アッシュ著(平凡社)

アーサー王、私は恥ずかしながらその伝説の人物の名前を記憶にとどめたのはごく最近のことです。しかし、気づかずに今から40年前にそのアーサー王と遭遇していたのでした。それは「エクスカリバー」という映画。ただ、映画のストーリーはほとんど覚えておらず、映画のタイトルのエクスカリバーと湖から神秘的な女性の手が出てきて剣を突き出す映像のみを憶えているだけでした。

ストーリーもアーサー王の名前も覚えていないのに、なぜかこの映画の空気感のようなものだけが、ずっと心に残っていたのです。学生時代から何十年と言う時間が経ってアーサー王とは?なんてことを考えている自分を考えると不思議です。とても深くかつ遠い部分で縁があったのかもしれません(笑) アーサー王の話は複雑でわかりづらく何本か映画を探して見たのですが、この映画「エクスカリバー」が一番わかりやすいと思いました。

そのアーサー王ですが、このブログでも何回かとりあげている「イメージの博物誌」のシリーズにも特集されていました。海外の翻訳本なので、やはり、西洋ではアーサー王というのは、日本で感じているよりずっと身近な存在なんでしょうね。

ということで、その本から簡単にキーワードとともにまとめてみました。

◆伝説の生成
1129年から51年間、オックスフォードで教鞭を執っていたという経歴しか知られていないジェフリ・オヴ・モンマスが書いた「ブリテン列王史」にアーサー王は登場します。それによるとアーサーはサクソン人の侵略からブリテンを守り、救世主として王位を継承したという。1190年ころ、グラストンベリーの修道士たちはアーサー王の碑文が刻まれた墓を発見したと主張した。が、それは捏造ではないかといわれている。

◆不思議な子供
アーサー王の出自は、父であるウーゼル王がコーンウォール公ゴルロイスの妃イゲルナに横恋慕し、魔術師マーリンに頼み、その魔術によりゴルロイスに変身しイゲルナと一夜を共にした。その時に孕んだ不義の子供がアーサーである。そしてそれらを図ったマーリンはその子供を安全に育てるべく引き取ることになる。

◆啓示と超常能力
魔術師マーリンは予言者、助言者、奇蹟によってアーサー王の治世を助ける。このマーリンはケルトのドルイド神官がモデルになっている。ドルイドは神々の言葉を伝える古代のシャーマンなのである。

◆古代世界の残映
アーサー王の物語は古代社会ケルトの名残を引きずっている。例えば、アーサーは巨人と戦う。あるいはドラゴンといった神話上の怪物も登場する。サマセットの領主がグィネヴィアをグラストンベリーに幽閉し、アーサーがそれを助け出すのは、英雄が迷路の中にいる女性を奪還するという迷宮譚とも関連しているといえるだろう。

◆偉大さの継承
アーサー王は騎士道の鑑であり、後世「9人の英雄」として描かれた。9人の英雄とは、ヘクトル、カエサル、アレクサンドロス大王、ヨシュア、ダビデ、マカバイオス、アーサー王、カール大帝、ゴドフロワである。

◆騎士団
騎士たるものは勇敢で忠実、礼儀正しく、武芸に秀でて、不正を糾弾し弱きを助けなければならない。中世文芸において騎士道は社会的・宗教的義務を負う「円卓の騎士」と装いを改めることになっていく。英国の王侯貴族たちは「円卓」という催しを開き、アーサー王伝説の登場人物に扮し宴会や武術試合を行ったという。

◆女たち
アーサー王伝説に登場するグィネヴィアやモルガン・ル・フェイにはケルトの女神の伝承が潜む。キリスト教にとって異教的神話や魔術はいかがわしいものとして、モルガンはアーサーに陰謀をたくらむ魔女に、湖の乙女は彼女に熱をあげるマーリンを破滅する存在としてしまった。

◆黄金時代
アーサー王は固定したものとして描かれたのではなく、ブリテンのケルト人の愛国的指導者、ウェールズ英雄伝説の中心人物、大帝国の建設者、騎士道ユートピアの支配者、理想主義者と次々と変貌させてきた。幾度も復活するアーサー王の伝説は、過去の黄金時代を、めぐる多様な夢想に訴えかける消えぬ要素なのである。

◆有為転変と没落
素晴らしい時代は存在し得るのだろういが、長続きするとは言えない。それは英雄たちにおいても例外ではない。運命の女神はその輪を回転させ、王者に没落をもたらす。アーサーの栄光は内から衰えて打ち果てる運命にあるのだ。

◆至福の島
アーサーが女たちにともなわれてアヴァロンへ向けて水上を運ばれていった時、アーサーは太古の神話のなかに消え去ったともいえる。ブリトン人は美しい西方の島の存在を信じており、そこには神が眠る洞窟があるという。アーサー王の終焉譚、不死譚の背景にはこのような信仰が潜んでいる。

◆大いなる帰還
死亡したとされながら実は生存しており、帰還が期待されるという主題にはいくつかの変形がある。ケネディ大統領は脳損傷のため昏睡状態に陥りながらも生存しているという噂が70年代に流れたがこれにアーサー王の生存譚と同じような二面性を見ることができる。ケネディが収容されているダラスの立ち入り禁止区域の病院は、アーサーの眠るアヴァロンに対応している。

アーサー王について、 現場主義がモットーの元・読売新聞大阪本社の記者である武部好伸氏が、アーサー王の全体像とそれに関連した場所を紹介した映像を51オンラインで配信中です。この映像はケルトの魅力を探った全部でオンライン講座「ケルト、癒しと再生の森」の一環で配信しているものです。この武部氏の映像を見ると複雑なアーサー王の物語がよくわかりますし、元・新聞記者なので実際に現場に足を運んでのレポートとなり、アーサー王には、こんな伝説の場所があるんだと思われるかと思います。さらに上記の映画「エクスカリバー」を見ればよりイメージが具体化します。

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