あのユングがお尻ペンペン「危険なメソッド」

映画「危険なメソッド」(2011年)
■監督:デイヴィッド・クロネンバーグ
■出演:ヴィゴ・モーテンセン、マイケル・ファスベンダー、キーラ・ナイトレイ、他
この映画は心理学に欠かせない二人の著名な人物が出てくる。フロイトとユング。フロイトは無意識を発見し、夢判断や性的欲望の理論化で20世紀に多大な影響を及ぼした思想家だ。一方のユングは、無意識の理論をさらに深めて集合的無意識の理論を構築し、精神分析をより広範な文化的・宗教的領域へ拡張した。
この二人は一時、急接近するも意見の相違からたもとを分かつことになる。この二人の間、特にユングに関係する人物としてサビーナ・シュピールラインがいる。私は彼女の存在を知らなかったが、当初はユングの患者だったが、後に、不倫の関係になる。しかも彼女は後に、破壊を通じた創造という理論で、精神分析家として活動するがナチスによって惨殺される。ユダヤ人だったのだ。
ユングは、神話的要素を分析に取り入れているので、よもや、サビーナ・シュピールラインとの関係がフロイトの理論を地で行くようなものになったとは、想像もしなかった。というのも、フロイトとユングの決裂は、性的なリビドーを精神エネルギーの中心とするか否かという、理論上の根本的対立に基づいていたと理解していたからだ。そのユングが、まさかのムチ持って、シュピールラインのお尻をペンペンするとは性的なリピドーそのものじゃないか。
しかし、シュピールラインとの関係が、後にアニマというユングの考え方につながるという説もあるみたいだ。
この映画は派手な演出部分はない。ないぶん、シュピールライン演じたキーラ・ナイトレイの演技が鬼気迫るものとして印象深い。彼女が精神を病み、ユングのもとを訪れた時の独白で苦しむさまは、凄かったし、ユングとの情事でムチ打たれる演技も迫力があった。顔は歪めてヘン顔するは、大声出して泣き叫ぶは、泥んこになるは 、お尻を叩かれて快楽の声をあげるは、静かな映画だけども彼女が出てくるところは過剰だ。キーラ・ナイトレイからしてみれば、およそ美しく撮るというのとはかけ離れているので、たまったもんじゃないなと思うけど、クローネンバーグの映画に出れるという魔力があるのかな?