背徳の邪神か?「白蛇伝説」

映画「白蛇伝説」(1988年)

■監督:ケン・ラッセル
■出演:ヒュー・グラント、アマンダ・ドノホー、キャサリン・オクセンバーグ、他

ケン・ラッセル監督の「白蛇伝説」は、ドラキュラの原作者として有名なブラム・ストーカーの小説が原作ということです。怪奇映画ということなんだけど、ユーモアと紙一重の所がケン・ラッセルらしい。とくに蛇使いの音楽を鳴らすと、蛇が踊りだすのは、最高だ。邪神に使えるセクシーな蛇女が、男を誘惑して屋敷に招き入れるが、男が部屋に合った楽器で蛇使いの音色を奏でると、突然、踊りだすのは全くの予想外で笑えた。こうしたことは、ラッセル以外はできない演出だろう。

この地に残る白蛇伝説。邪神とされてきたわけだが、ケルトを見るまでもなく、イングランド北部やアイルランドには、キリスト教以前は土着の多神の信仰があったのだ。まさにハロウィンなんて、その名残りなわけだから。

キリスト教との対立も幻想的に描かれており、磔にされたキリストに蛇が巻き付き、その前で、修道女たちに襲い掛かる幻想的映像は、背信的であり、宗教的表現が性的狂乱の場ちなり、ラッセル、こんなこと描いて大丈夫か?と心配してしまう。聖書では蛇は、原罪をもたらした悪の象徴のように描かれているが、ラッセルは、そうではなくて生と性、再生のパワーとして捉えているようだ。蛇女が男たちを毒牙にかけるのは、人間の深層に眠っている欲望と本能を解放する役割を持っているかのようだ。

ある意味、この世の善を名乗る宗教こそが、逆説的に異端を排除する暴力装置となっているんだとケン・ラッセルは言っているのうにも見えてくる。ケン・ラッセルを、私はチャレンジ精神旺盛な冒険家だなと、いき目に見ているので、映画を、物語を楽しもうと思っている人は、ホラーとしての物足りのなさ、笑える要素もあるので、ずっこけてしまう人もいるだろう。

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