舞台劇を見ているような重厚な「鏡の中にある如く」

映画「鏡の中にある如く」(1961年)
■監督:イングマール・ベルイマン
■出演:ハリエット・アンデルソン、グンナール・ビヨルンストランド、マックス・フォン・シドー、他
登場人物は4人しか出ない、展開する場所も1ヶ所、会話を中心に映像は展開していくとなると、それはまるで舞台を見ているような感覚になる映画であったと言えばいいのでしょうか。なかなか重厚な見応えのある作品でした。
ベルイマンは、小説家の父、精神を病んで発病している彼の娘。それを演じているのは「不良少女モニカ」で怪演をみせたハリエット・アンデルソン。医者であるその夫、そして小説家の息子の4人が避暑に来ているのか閉塞感も漂うとある島でバカンスを過ごしている様子を丹念に描いています。話の展開の中心には、今まさに人格が崩壊していこうとする娘がいて、それをそれぞれの立場の男が彼女を支えようとしています。彼女の苦しみや異様な行動は、男らの隠れたコンプレックスを引き出したり気づかせたり、あるいは内面の危機を引き起こしたり、トリックスターのような役回りに見える。
布石があったのでそうなるのかなと思っていたのですが、衝撃的な出来事として弟との近親相姦まで引き起こします。そしてこの姉は、やがて神が姿を現すといいだし幻影を見るようになるのですが、しかしその幻影は人の姿をした神と思いきや蜘蛛のような姿をした異様なものでした。
それは、それこそ死や暴力などあらゆるものを包含した原始的な野生の感性をもった聖なる存在に近いものなのではないだろうかと感じさせられわけですが。。この異形な原始的心性の幻影と近親相姦などにより、姉はもっと根源的な神話的な世界の住人となりつつあるのかもしれません。神は存在するのか、しないのか?この映画はのちの作品とならんで「神の沈黙」三部作と言われていますが、ラストの父親と息子の神とは愛なのではないかという会話には救いが見られました。
ところでこのロケ地の島はベルイマンの好みだったようで、そこで何本かの映画を撮ったり、最後はそこに住み着いたそうですね。

