虚飾の「マップ・トゥ・ザ・スターズ」

映画「マップ・トゥ・ザ・スターズ」(2014年)

■監督:デイヴィッド・クロネンバーグ
■出演:ジュリアン・ムーア、ミア・ワシコウスカ、ジョン・キューザック、他

「マップ・トゥ・ザ・スターズ」は、クローネンバーグが冷めた視線でハリウッドを描いた作品。脚本がブルース・ワグナーという人物で、自身も売れない時、俳優兼脚本家、リムジンの運転手だった経験者で、ハリウッドの裏事情に通じた人物らしい。この脚本家と同じような人物が映画にも登場する。

この映画で印象に残こったのはジュリアン・ムーアの演技。落ち目の女優を演じているのだが、彼女のなんとか返り咲きたい焦りとこれまでの傲慢さというか、はしたなさ、を両極端に演じている。特に彼女が屁をこく場面があるが、これには、びっくりで、トイレに座り屁をこきながら薬を買ってこいと助手に指示する。これ、意外とあるあるなのかも知れないけど、よくやるなと思った。まがりなりにもジュリアン・ムーア、まだ現役の女優というのに そんな演技させられるなんて。ただ女優の虚像を剥がすにはピッタリだなと。最後、彼女は些細なことで殺されてしまう、これも寓意的だ。この力技の演技によりジュリアン・ムーアはこの映画で、カンヌの女優賞を取っている。

クロネンバーグが「ハリウッドには、死にもの狂いな感じがあるし、自分を認めてもらいたいという必死の思いがけない渦巻いている」と発言しているように、明日こそはスターの仲間入りと野心を抱く者、あるいは、なんとか再起し忘れ去られたくないとしがみつく者らが蠢いているのだろう。ハリウッドを舞台にした映画がいくつかありますが、私はハリウッドに行ったこともなく、その実際を全く知りません。そこがどんな磁力と魔力を持った場で、人を狂わす要素を持っているのか、ただただ想像するのみです。ちなみにこの映画、クローネンバーグのボディホラー的な表現はありません。

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