破滅する一卵性双生児「戦慄の絆」

映画 「戦慄の絆」(1988年)
■監督:デイヴィッド・クローネンバーグ
■出演:ジェレミー・アイアンズ、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド、他
「戦慄の絆」は、クローネンバーグ監督の作品の中でも傑作と言われることがある映画です。確かに一卵性双生児の医師マントル兄弟の破滅を丁寧に描き、2役を演じたジェレミー・アイアンズの演技も素晴らしい。精神の変容をみる場合,、双子を同一人物の二面性とみることもできるし、そこに女性が絡むことにより変化の兆しを感じることができる。クロネンバーグらしい異常な事態に人間の本質を見るということも思う。
ただ個人的に、医師が婦人科医であり、女性の肉体をどこか乱暴に扱っているようにみえること、兄弟にからむ女性が3つの子宮口を持つ異質な肉体を持ち、彼女自身の人生に悩んでいるのに救いがないこと、兄弟が独自に作らせた女性の肉体の解剖器具が異様なことなどにより、どうしても嫌悪感が先にたち、映画的な構造も素晴らしいのに、どこか違う印象も持ってしまう。
例えば、弟が普通とは違う3つある子宮口がある患者を発見した時、女性は診察台に足を広げているのに、ちょっと失礼と言って、患者をそのままの状態にして、兄のところへ報告に行く。兄は忙しいというが、名前を見てその患者が女優と気付くと、約束を遅らせても診察台に行く。こうした表現が、私には合わない。文化の違いなのかも知れないけど、ちょっと嫌悪感を感じるのです。
やっぱりクロネンバーグは、異常な事態を描くので、仕方がないけど受け入れられる部分、受け入れられない部分があるということですね。