循環的生命観、ケルトの再生思想を解説したとても興味深い本

「ケルト 再生の思想ーハロウィンからの生命循環」鶴岡真弓(ちくま新書)

鶴岡真弓氏の『ケルト 再生の思想』はとても興味深い本でした。古代ケルトにとって一年の始まりは「ハロウィン/サウィン」であり「死からの再生」の観念を軸に循環的な生命観があるというのです。この根底に流れている考え方こそが自然と共に生きるというものであり、四季が豊かな我々日本人が大切にしてきた同じような生命観が近代化によってどんどん忘れさられてきているなか、これでいいのかと問いかけてくるようなインパクトがありました。

キリスト教がヨーロッパに広がる前の時代、その大陸の一部はケルト文化に覆われていました(大陸のケルト)。彼らは文字を持たない文化だった故、その詳細な部分までは残されていないのですが、ヨーロッパを席巻したローマの手が、アイルランドにまでは及ばなかったので、後に入ってきたキリスト教とケルトが融合するような形で残っている特徴があるようです。(島のケルト)

今日では仮装イベント化されている「ハロウィン」は、もともとはアイルランドやスコットランドからの移民がアメリカに伝えたもの、ケルトの祭りサウィンが源流にあります。ケルトの新年は冬の始まりとされる11月1日。この日を境に光の半年は闇の半年へと反転、大自然のエネルギーが光から闇へと転じる節目の時であり、生と死、あの世とこの世の扉が開き、祖先などの死者たちが戻ってくると信じられていたというのです。

ケルトの人たちは四季の循環を、冬のついたち=サウィン、春のついたち=インボルク、夏のついたち=ベルティネ、秋のついたち=ルーナサ・ラマスとして四つの季節祭を営み、大自然の生命循環の周期の節目と考えていて、春分、秋分、夏至、冬至を含むと8つの季節の節目があることになります。

さら面白いことにキリスト教では、布教のためであったのかそれとも伝統社会のキリスト教以前の異教時代の祭暦の慣習を活かす形としたのか「万聖節=諸聖人の日」などのキーとなるものをそこに持ってきているということ。ブリテン諸島ではキリスト教の諸聖人の日のイヴを、ハロウ(聖人)のイブという意味でハロウィンと呼んだというのです。

あるいは、2月1日の春の到来を寿ぐインボルグ、この日は一年の農耕牧畜の初めの日とともに、キリスト教の聖女ブリギッドの祝日ともなっているのですが、この聖女はケルトの女神ブリギッド(ブリード)がその前身としているというのです。さらに2月2日は聖母マリアのお浄めの祝日「聖燭祭/キャンドルマス」が続く絶妙なタイミング。

とにかくも、私は40年以上前の受験において世界史よりは日本史を選択し、外国人コンプレックス?もあり西洋については、学ぶこともなく過ごし疎いことばかりなのですが、それでもこの本はケルトの影響を無知な私にでも感性の網にひっかかるように文化、芸術までの領域の様々な現象、情報にまで及びギュッと詰まった充実した内容が提示されており、最近読んだもののなかではとても学び深い一冊なのでした。

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