この男、凶暴につき「イースタン・プロミス」

映画「イースタン・プロミス」(2007年)

■監督:デヴィッド・クローネンバーグ
■出演;ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセル、他

2007年のデヴィッド・クローネンバーグ監督による作品。タイトルの「イースタン・プロミス」とは、人身売買を指し、東欧から犯罪組織によって、娼婦として売り買いされる女性たちの売買契約を意味するらしい。ロンドンのロシアン・マフィアに切り込んだ話です。

病院の産婦人科で働くナオミ・ワッツ演じるアンナは、クリスマスの夜、急患で運ばれた妊娠している身元不明のロシア人少女が、出産後に亡くなってしまうことに巻き込まれます。少女が遺した所持品の中にロシア語で書かれた日記を見つけ、アンナは、その日記を手がかりに、生まれてきた赤ん坊の身元を割り出そうとします。日記に挟まれていたカードを頼りに、アンナはロシア料理店を訪れます。しかし、そこはロシアン・マフィアの巣窟だった。

アンナが日記の翻訳をしたことから、亡くなった少女は、人身売買や売春、麻薬漬けにされた恐るべき実態がわかってきます。ここで、ヴィゴ・モーテンセン演じるロシアン・マフィアで運転手のニコライと知り合い、彼は彼女に深入りしないよう警告しつつも、時に彼女を守るような行動を見せる。

ヴィゴ・モーテンセンの鬼気迫る演技は、各映画祭で主演男優賞にノミネートされたこでわかるようになど、彼の存在感が、素晴らしくいいのだ。しゃがれた低音でボソボソと話、オールバックの髪型のこわもてスタイル。いきなりの登場で、さりげなく、タバコの火をベロで消すということを見せ、こいつただ者ではない、やばい奴かなと、感じさせてくれるには十分なシーンでした。

さらには体中にタトゥーがあって、このトゥーはロシアン・マフィアのメンバーが、その人物の犯罪歴、地位などを物語る言語がわり、勲章だというのです。モーテンセンは役作りのためにロシアを訪れ、元マフィアの囚人にも会ってくわしい話を聞いたと言われています。そのモーテンセンが公衆浴場で見せる、全裸の格闘シーンは、壮絶でヒシヒシと痛みが伝わってくるような傑出した場面です。

このヴィゴ・モーテンセンの演じたニコライという男は、おとり捜査官というのが、わかってくるのですが、トゥーにしろ、やってきたことは、ミイラ取りがミイラにになりかねない危うさもあります。クローネンバーグが、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」に続いて暴力について取り組んだ映画。

うわって、目をそむけたくなるような露骨なシーンはないけれど、肉体的な痛みと人間の持つ狂気性は十分に伝わる映画です。

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