絢爛たるチベットの秘仏と異形の神々に出会う

『チベット密教の神秘 快楽の空・智慧の海』正木晃氏&立川武蔵(学習と研究社)

たぶん中古でしか購入できないと思います。学研から出版された「チベット密教の神秘 快楽の空・智慧の海」(1997年刊)という本。この本は当代一級の仏教学者の正木晃氏、立川武蔵氏が、チベットで偶然立ち寄った寺院で見かけた絢爛たるチベット密教美術を見て驚愕し、慌ててこれはすごい、何とか残さないといけないと写真をメインとした本を出版したものです。

本にはこんなことが書かれています。「まさか、こんなところに、こんなハイレヴェルの密教尊像群があったとは。それも、いまだその存在が知られていなかったとは。・・・全容はおろか、その存在自体、ほとんど知られていないという事実がわかった。」相当貴重な壁画と言えそうです。

そのお寺はゴンカルチューデ。チベット密教ではいくつかの宗派があるのですが、ここはサキャ派と呼ばれるお寺。そこのイダム堂に、びっくりするような壁画があったということです。イダムとは守護神をさし秘密仏のこと。

サキャ派ゴンカルチューデののイダムはヘーヴァジュラという男女抱き合ったヤブユムと呼ばれる形の仏。

本の著者によると、それはおよそ仏と見えないおそろしい姿をしているのですが、我々人間の姿そのものということらしいのです。チベットの仏たちは、時に異様な姿をしたものを見かけることがあるのですが、そこには、裏の意味合いがあるようです。

このイダム堂は、残念ながら一般の人は入ることができません。秘仏ゆえに公開されていません。そんななかで、51コラボで企画したツアー(2019年11月)では、そのイダム堂の中に入ることができました。実際の空間では、写真では伝わらない波動的なものがあり、眩暈がするような感覚になります。

こんな現実感覚を麻痺させるようなすごい場所で密教修行者は、実際に瞑想などしていたのだろうか?

チベットは荒れ地で岩山がごろごろとしており、緑もすくなく殺風景。しかしこの空間は原色鮮やかで、かつ、異形の神々の壁画が四方を取り囲んでいる濃密な場所。そのギャップに驚きます。なぜチベットに濃厚な密教が栄えたのか?不思議です。

サキャ派のお寺ゴンカルチューデ、右の写真の岩肌に赤く塗られた部分があるのがわかりますか?地元の僧侶によるとそこは神々がいる場所なのだそうです。
チベット密教の神秘―快楽の空・智慧の海 世界初公開!!謎の寺「コンカルドルジェデン」が語る (Gakken graphic books deluxe (5))

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