聖地の路地裏で暮らす人々の生活を描く

『チベット 聖地の路地裏 八年のラサ滞在記』村上大輔 (法蔵館)

村上大輔という方が著者の、この本はとてもわかりやすく、そして、親近感を持って読むことができました。チベットとなると遥かなる秘境というイメージが強いです。私もそう思っていました。しかし近年は鉄道が敷かれ、以前に比べ比較的行くのが身近になってきたと言っても過言ではないようです。

私はチベットの中心地ラサに2回行ったことがあるのですが、初めてそこへ行った時、それまで思っていたイメージと大きく違い、大変驚いたことがあります。辺境の地というイメージがあったのですが、人が多く住む大都会だったのです。

そこはラサに中国による近代化の波が押し寄せていて、ポタラ宮近辺もかなり整備されている感じがしました。古いポタラ宮の全景を撮った写真と比べると、現在の周囲の様子はかなり印象が違ったのでした。

中国が開発した新市街と呼ばれる地域には高層の建物が並んでいます。しかし、そこは人気がなくガランとしており、賑やかなのはチベット人がいる旧市街と呼ばれるところ。世界遺産でもあるチベット仏教の総本山と言えるジョカン寺周辺です。そのジョカン寺には巡礼に訪れたチベット人が、大勢、五体投地をしていて、彼らの信仰の厚さを感じることができ圧巻の風景です。

著者の村上氏は約6年ラサに駐在し、その様子を綴ったチベット路地裏の等身大的なレポートです。私が経験した観光中心のたった数日間の滞在でも、そのレポートを読むと、なるほどと思える部分が多々あり、チベットという場所に親しみを感じます。

チベットは鳥葬が多く輪廻転生を信じているので肉体を動物に捧げるとか、子供が死ぬと川に死体を流すので魚は食べないといったような、現地で聞いた信じがたいような話も本に書かれており、あらためてチベットの死生観にインパクトを受けるのでした。

これからチベットに行こうと思っている方、チベットに行ったことがある方にオススメの本だと思います。(チベットのラサは、近代化が進んでいます。5年経ったらラサもまた大きく都市化が進んで様変わりしているような気がします)

チベット 聖地の路地裏: 八年のラサ滞在記

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