チベットの人々の生活をとらえた「ツァンパで朝食を」が素晴らしい

「ツァンパで朝食を」渡辺一枝(本の雑誌社)

著者の渡辺一枝さんは、あの椎名誠氏の奥さまです。椎名氏が冒険家エッセイストとして有名なら、奥様も負けじと活動的な感じがします。とにかくチベットに興味があり、何度となくチベット各地を訪ねあるいたといいます。そこで撮りだめてていた写真集がこの「ツァンパで朝食を」です。30年の集大成がそこに詰まっています。

私がこの本を知ったのは、以前、チベット旅行を計画している時に、ネットで検索していると渡辺一枝さんの写真展が企画されており、その写真の素晴らしさに魅かれてしまい写真集も購入したのでした。そして先日、チベット医学に関する映像を撮影したのですが、そこでこの本のことを思いだし、もう一度、写真集をめくってみたのです。渡辺さんのエッセイとともに切り取られた写真の数々が素晴らしいなと感じたのです。

衣服、食事、住まい、宗教行事・・・独特な死生観で世界中の人々に影響を与えてきたチベットの人たちの生活の風景。そこに生活する人々は、どこかなつかしく、そして何よりも日本人にとても顔立ちが似ているような気がするのです。私は、過去2度ほどチベットに行きましたが、この顔の人、日本にもいると感じたものです。これはとても貴重な資料だと思います。中国による近代化の波がチベットに流れ、この先、10年後彼らの生活も大きく変化してしまうのではないか?と、ラサに行った時思ったからです。

ヒマラヤにも近く、この緑も少なく剥き出しの岩々も目立つ地球の辺境の地のひとつともいえる険しいこの土地でなぜ絢爛たる密教美術が栄えたのか?そこには何かとても重要な意味が隠されているんじゃないかと、想像したりします。それはなんなのか、わからないのですが・・・。

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