ビバ、フェリーニ!悩ましくも混沌の中で作品が生まれてくる
映画「オーケストラ・リハーサル」(1979年)
■製作年:1979年
■監督:フェデリコ・フェリーニ
■出演:ボードウィン・バース、ダヴィッド・モウセル、フランテスコ・アルイジ、他
忘れられない音楽を創作してきたニーノ・ロータ、彼とフェデリコ・フェリーニは盟友関係にあり、フェリーニ映画をずっと音楽面で支えてきました。ニーノ・ロータとのコラボレーションなしでは、フェリーニがここまで巨匠となりえたか?それだけ大きな存在であったことは、映画と言う総合芸術の形態を考えるにあたり言い過ぎとは言えないだろう。代表作である「道」の成功は、ニーノ・ロータの音楽なくしては成し得なかったのでは?しかしこの協働作業もロータの死を迎え、この作品で最後となってしまいます。
中世時代に建てられた古い礼拝堂。そこに集まったオーケストラ奏者の面々。そこにドイツ人の指揮者。リハーサルをテレビがドキュメンタリーとして撮影するという。演奏者は思い思いに自分の楽器について語る。やがて、リハーサルが始まると高圧的な指揮者に対して、演奏者の大ブーイングが起こります。
ラジオでサッカー中継を聞きながら演奏するとか、歴史的な礼拝堂の壁にスプレーで落書きするは、ピアノの下でHする女性は、壁に掛けられた偉大な音楽家の肖像に泥をぶっかけるは、挙句は演奏者同士で殴り合いのけんかが始まる・・・。指揮者はいらない!とばかり巨大なメトロノームを持ち出してくる始末。
この混沌、この猥雑さをどう捉えればいいのか?オーケストラの演奏者ってこんなに酷いの?一つの目的に沿って集まった集団、その個々人の人間的なクセを極端に超デフォルメして、組織が崩壊していく様を描いているように感じました。
そして、最後はどうなるのか?地響きとともに巨大な鉄球が礼拝堂の壁をぶち壊し出現する。呆然とする演奏者たち。この予想もしなかったカタストロフィー、すべての空気を一変させる出来事、そうした強烈で予想外の外的な圧力が、行き過ぎた乱痴気騒ぎから彼らの正気を取り戻させる。指揮者は再びタクトを振る。音楽がはじまる・・・、コレ、何か社会の流れを変えるような象徴的なものを表現していると思った。
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