ビバ、フェリーニ!一つ一つのエピソードが濃密すぎる郷愁の映画

映画「アマルコルド」(1973年)

■製作年:1973年
■監督:フェデリコ・フェリーニ
■出演:ブルーノ・ザニン、プペッラ・マッジョ、アルマンド・ブランチア、マガリ・ノエル、他

フェデリコ・フェリーニの映画「アマルコルド」は4度目のアカデミー賞を受賞した作品で代表作の一つと言えるものです。「アマルコルド」とは「私は思い出す」という意味があるそうで、フェリーニの少年時代の様々な出来事を綴ったかのような映画です。フェリーニといえば故郷のリミニというのがキーワードとしてよく出てくるのですが、そのリミニを舞台としたのかなと想起することになります。

「アマルコルド」は「道化師」、「ローマ」と続く延長線上にあり、ここで頂点を極めたと言えます。この映画にはストーリーらしき展開はありません。エピソードの羅列で2時間余を見せて行くのです。なので映像エッセイとも言えるような作品であり、それがアカデミー賞を受賞するまでに洗練されたものとして名人芸と言える他の追随を許さないものとなっています。

しかし、有名な映画だしアカデミー賞も取っているしと、ハリウッドが作るような物語を重視したものを期待すると大きく外されると思います。なんだ?この映画は!ということになるでしょう。フェリーニの映画は彼独自の世界、フェリーニらしさをわかったうえでみないと期待を外される可能性あります。

とは言いながら退屈極まる映画なのか?というと全くそうではないのです。実に巧妙に作られ見るものを飽きさせない作りになっているので、逆にそれを見たときはビックリする可能性もあるということなのです。この「アマルコルド」は一年の様子を描いているのですが、夏からやがて秋になり、、、何て言う語りは入っていません。風景やエピソードでそれを感じさせるのです。

そして一つ一つのエピソードの、なんと濃厚で充実し楽しいこと。映画評論家の故・淀川長治氏が「アマルコルド」の一つ一つのエピソード自体が一本の映画になるくらいだと評したことがありますが、全く同感です。

たとえば、主人公とおぼしき家族、その長男らしき人物が精神を病み施設に入っている。外出が許され家族と出かけるも、その長男は、どうやって登ったんだろうと思わせるでっかい大木に登り、家族が危ないからおりてこいと言っても意に介さず。逆に「女が欲しい」と叫び続けるのです。これは笑ったし、でも笑えない深みもあるなと。

やがて施設の医師が来るのですが、小人の修道女がその男に降りて来なさい、もう、遊んであげないよというと、家族を無視し続けた男はすんなりと降りてくる。なんかビックリするエピソード、こんなのがいくつもあるのです。ちなみに印象的なのは豪華客船を村人総出で見に行く場面や、大雪が降る中で孔雀が羽を広げる場面は、目が釘付けになります。

思い出した時にまた見てみたい、そんな映画です。

8月20日で終了した「フェデリコ・フェリーニ映画祭」が行われた恵比寿ガーデンプレイス、夕陽がきれい
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