ビバ、フェリーニ!絶望の中の天使の笑みが忘れられない

映画「カビリアの夜」(1957年)

■制作年:1957年
■監督:フェデリコ・フェリーニ
■出演:ジュリエッタ・マシーナ、アメデオ・ナッツァーリ、フランソワ・ペリエ、他

まあ、ジュリエッタ・マシーナ演じる娼婦カビリアの元気がいいというか、威勢がいいこと。カビリア節と呼びたくなるくらいです。這いつくばりながらも明るく生きるカビリアはおよそ娼婦というイメージにあまり結びつかないし、色気ももなく魂の純粋性を感じさせる生きるのが下手なキャラクターとして描かれています。まるでアニメのキャラクターのように。

苦労に苦労を重ねて体を張って生きているカビリアなのですが、男の優しさにコロっていってしまい、騙される始末。冒頭のシーンから男に騙されお金を踏んだくられ、おまけに川に落とされ死にそうな思いをしているのにもかかわらず、ラストも同じように優しく言い寄ってきた男に騙され全財産を失う羽目に。

懲りないというか同じパターンを繰り返すわけなので三つ子の魂百までも、というのはいい得て妙と言うべきなのでしょうか?

カビリアが遭遇していくいろいろなこと、売れっ子映画俳優との出会い、聖母マリアの奇跡をと祈ること、催眠術にかけられるステージなど、一つ一つが面白くグイグイ引き込まれるのですが、それぞれの場面におけるジュリエッタ・マシーナの演技が基本すごいなと思わせるのです。

この映画における一番の魅力は多くの人が絶賛しているラストシーンです。男に騙され全財産を失ない「殺して」と泣き叫び絶望の淵に落ちる場面、この場面も壮絶で何度も地べたに泣き伏すのでジュリエッタ・マシーナは膝を骨折したエピソードがあるといいます。そして、とぼとぼと家路につくカビリア。といっても家まで売り払ってしまったので帰る家はない。いろいろ面倒をみてくれた友達の家を訪ねるのだろうか?

そこに楽器を鳴らしながら陽気に歩いている若者のグループに遭遇する。絶望の中に一瞬、カビリアがフッと微笑むのです。それが微妙なアングルカメラが捉えており、カビリアが観客に向かって微笑んでいるかのようにもみえるカメラワーク。この一瞬の微笑みのなんと素晴らしいこと。どんなに辛いことがあっても、前に進んでいく、そんなメッセージ性の強い映像でした。ジュリエッタ・マシーナの独特なキャラクターゆえに強烈にアピールできたのだと思います。

この映画がどんなに愛されたかはブロードウェイの振付師ボブ・フォッシーが「スイート・チャリティ」というミュージカルを演出し、映画まで作ったのだから・・・。

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