ショーの前では死さえも祝祭に「オール・ザット・ジャス」

映画「オール・ザット・ジャズ」(1979年)

■監督:ボブ・フォッシー
■主演:ロイ・シャイダー、ジャシカ・ラング、アン・ライキング、他

「オール・ザット・ジャズ」は、あの「キャバレー」を監督したボブ・フォッシーが、1979年に製作したミュージカル映画。 ブロードウェイの伝説的振付師・演出家であるボブ・フォッシーが、自身の半生を自伝的に描いた作品で、黒澤明の「影武者」と並び、カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞しています。生前に自伝的映画を作っちゃうというのは、すごいなと思うのですが、そうしたモチベーション、伝えたいことがあったということですね。過酷な仕事と不摂生な生活によって心身を削りながら、死に向かって突き進む姿を、虚実入り混じる幻想的な演出で描いており、私の好きなフェデリコ・フェリーニの「81/2」の影響も多分に感じる、好きな作品です。なによりもフォッシー・スタイルと呼ばれるダンスに、強く引き込まれます。、肩を丸め、内股で、指のスナップを効かせて、セクシーかつシャープに、ハットやステッキを使う特有の動きにワクワク、ゾクゾクしてしまいます。

酒と薬と女とタバコ。口には絶えずタバコがある超ヘビースモーカー。これじゃ、今の時代ならば健康に悪いのでは?となるのですが、クリエイティブな仕事に従事している人が、薬物で死んだとか、ドラッグにはまったということをたまに耳にしますが、人々を惹きつけるソフトを生み出す創造の苦悩は神経を麻痺させるものに走りやすいのだと想像したりします。創造なんだと、ボブ・フォッシーのこの不健康なスタイルに、納得もできる。映画はそうしたことも感じさせてくれて、自分の死までをクリエイトしてしまう自己陶酔感が、私はいいと感じるのです。

私はこの映画を二十歳になるかぐらいの歳に公開時に映画館で見ているけど、今回久ぶりに見て大きく印象が変わったのです。この映画のテーマは、死というものを描いており、はたから見たら、破天荒な感じがする彼の独特の情熱のスタイルは、ラスト死さえもバイ・バイ・ライフと歌とダンスで、エンターテイメントに、祝祭的にしてしまう演出に引き込まれるように共感したのです。死というものをどうとらえるかというのは、様々ですが、こうした表現は、好き嫌いがあるかもしれないけど、見たことがなく、革新的だなと感じたのです。

主人公のロイ・シャイダー演じるギデオンは、自分の死を受け入れ、ジェシカ・ラング演じる死の天使もとに行くわけですが、この死の天使が死神のようなおぞましいものではなく、美しい女性というのも、こうあって欲しいという願望もあり、いい感じだなと。自分の死をショー的、祝祭的にとらえた最後、一転して、死体を包む袋のジッパーが閉められる映像で終わるという、つまりリアルな現実へと突き落とすラストは、死をいかに祝祭にしようとも、肉体の破滅、絶対的な孤独を強烈に感じさせます。誰も死については正直わからないからだ。現実に突き落とした後、流れる「ショーほど素敵な商売はない」の歌。

二十歳のころにはわかららなかったけど、六十歳すぎたこの歳になって、死をミュージカルにしちゃうなんて、傑作だなと感じてしまった「オール・ザット・ジャズ」。お気に入りの一本となりました。

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