映画の舞台から25年以上経過しているも、色褪せない「ニューヨーク1997」
映画「ニューヨーク1997」(1981年)
■製作年:1981年
■監督:ジョン・カーペンター
■出演:カート・ラッセル、リー・ヴァン・クリーフ、アーネスト・ボーグナイン、ドナルド・プレザンス、他
映画のタイトルは「ニューヨーク1997」、その1997年から25年も経ってしまっている現代。ジョン・カーペンター監督による「ニューヨーク1997」は1981年に作られた作品で、当時のアメリカにおいて16年後の世界は、無法者に溢れ暴力が蔓延した社会になっていると予測したということなのだろうか。そのくらいアメリカのモラルが低下していたのだろうか?
その辺りの事情は知る由もないのですが、都市そのものが刑務所になっているというのは相当悲惨な近未来を描いたことになります。ただ、現実はそのようにならず、スネーク(=カート・ラッセル)が不時着したツインタワーは、テロにより今はそこにはありません。同じく映画ではハイジャック・テロが敢行されるも首謀犯は反帝国主義を唱える共産ゲリラ、しかし現実はアラブ系反米ゲリラであったということになります。当時は冷戦時代で、今はなきソ連がアメリカの仮想敵国となっているのです。
モラルと言えば大統領救出にスネークが担ぎ出されるのですが、そのタイムリミットが24時間(それを超えると死んでしまう)という警察のやり方は、いくら犯罪者とはいえ悪党以上に悪党とも言える無謀さ。そのスネークを演じたカート・ラッセルはカッコイイ。このスネーク、筋肉ムキムキ系の超人的ヒーローではなく、無敵の強さを誇るというわけではない。その点で逆に共感を呼んだのでしょうか、このスネークというキャラがフィギアになっていることからも、いろいろな点でカルト的人気があったんだろうと推測するわけです。
ところで、劇中でスネークがリングに上げられて戦うシーンがあります。カーペンターはプロレスが好きだからそうなったらしいのですが、その相手役として登場していたのは、故ジャイアント馬場とも戦ったことのあるオックス・ベイカーというプロレスラー。私は子供の頃、プロレス・ファンで、中学生の時に大阪の万博跡地で開催されたプロレスを見に行き、その時に来ていたのが、映画に登場したオックス・ベイカー。彼を後ろから追っかけて、ドキドキで禿げた頭を後ろから触った記憶があります。
時間がない!タイムリミットぎりぎりのところでスネークの大統領救出劇は展開する。ジョン・カーペンターの演出は言葉にするのは難しいのですが、ハリウッド映画のように計算されまくった演出というよりは、荒削りではあるもののより作家の個性がより滲み出ている画面になっているように感じます。それが持ち味のような気がします。あれれ?と思いたくなる部分もあるのですが、淡々と違和感なく進んでいく。
ジョン・カーペンターの映画は、B級といえばB級、ただし「超」の文字が付く超B級なのです。「ニューヨーク1997」はB級映画史の中で燦然と輝く星と言えるでしょう。