アルゼンチンよ泣かないで!皮肉と感動が入り混じる名作『エビータ』

映画「エビータ」(1996年)

■監督:アラン・パーカー
■出演:マドンナ、アントニオ・バンデラス、ジョナサン・プライス他

私がエビータという名前を知ったのは

エビータと呼ばれるアルゼンチンの伝説の女性。その存在を知ったのは1981年に製作されたフェイ・ダナウエイが演じたドラマを、テレビで放送されたのを見てからでした。今からかなり前ですね。ドラマのほとんどは記憶していませんが、ドラマになるようなエビータとよばれた伝説の女性がいたんだ、ということだけ記憶にのこりました、のちにミュージカルの舞台があるのを知り、舞台化されるくらい激動の人生を送ったんだ、ということを知りました。ただ、舞台は見ていませんが…。

ミュージカルをベースに映画化

そしてそのミュージカルをベースに、1996年にマドンナが主演したアラン・パーカー監督の「エビータ」が映画化された。この映画いわゆるセリフはほとんどなく、まるでオペラのように歌で構成されているのが特徴的。エビータは実在した人物で、その描き方には映画ならではの工夫があり、、私は素直に感動し、いい映画だなと思いました。マドンナの歌に酔いしれ、アントニオ・バンデラス演じるチェのクールさが素晴らしいと感じました。忘れたころに思い出したら、また見てみないな、と思う映画のリストに加わったと言っていいでしょう。

エビータの生涯

あらためて、エビータとは、1946年にアルゼンチン大統領に就任したホン・ペロンの妻エバ・ペロンのこと。彼女はアルゼンチンの田舎町に私生児として生まれ、貧しい生活を強いられる。貧困から抜け出すために、15歳の時にタンゴ歌手と駆け落ち、女優を目指してブエノスアイレスに出てきて、次々とパトロンを変えて1943年にラジオドラマに出演、それがヒットしスターとなる。その年、軍事クーデターが発生。翌年に慈善イベントで、軍の実力者ホアン・ペロンと知り合い、独裁への二人三脚がはじまる。反ペロン派によって彼がとらえられると、ラジオでペロン救出を訴え、彼の危機を救う。そしてペロンと結婚。1946年ペロンが大統領となり、エバはファーストレディとなる。しかし、体は子宮がんにむしばまれ1952年、33歳の若さでこの世を去った。国中が彼女の死を悲しんだという。こうして彼女の生涯を追うだけでも、すごいなと思う。誰にでもできるものではない。まさに時代を駆け抜けるように生きた稀有な女性がエビータだ。

語り部アントニオ・バンデラスがいい!

一方、映画がエビータへの絶賛を絶妙に防いでいるのが、アントニオ・バンデラス演じるチェの存在である。チェは実在の人物ではなく、時に民衆、時に反対派の視点を統合した語り部として表れてきて、エビータの行為を鋭い皮肉と疑問を投げかけ続ける。びっくりしたのがバンデラスの歌唱能力がいいこと。そにあいまって演技に切れ味があり、彼が画面に現れるたびに、見るものは感情の流れを一度立ち止まって考え直すことになる。この構造によって『エビータ』は、感動的でありながらも、それを一歩立ち止まって冷静に見せるという映画になっている。この架空の人物、チェの存在も映画にとってはとても大きいのだ。

そしてやっぱりマドンナの歌声が

実際、エビータは、社会福祉の拡充や女性参政権の実現に大きく貢献した一方で、反対派への圧力や政治資金の不透明さなど、多くの問題も抱えていたという。映画を観る限り、信念と自己演出、理想と権力欲などが複雑に絡み合った女性だったのだろう。民衆に人気のあったエビータの33歳という早すぎる死は、神話化された。 エビータは聖女だったのか?悪女だったのか? そんな彼女を、マドンナが演じたのが絶妙だと感じた。マドンナが演じたからこそこの映画に魅力がでたと思うのだ。マドンナが「Don’t Cry for Me Argentina」と歌うとき、その歌声に魅了され、それを真剣に聞いている民衆の映像が流れると、不思議な感覚で胸に響いてくるのです。

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