戦禍をくぐり抜けた友情「キリング・フィールド」

映画「キリング・フィールド」(1984年)
■監督:ローランド・ジョフィ
■出演:サム・ウォーターストン、ハイン・S・ニョール、他
映画「キリング・フィールド」は、私がおススメする映画の一つだ。カンボジア内戦下とクメール・ルージュによる大虐殺という苛烈な歴史的背景の中で、アメリカ人記者とカンボジア人現地助手の感動的な友情を描いた実話を映像化した作品で、映画史に残る傑作だ。ニューヨーク・タイムズ記者シドニー・シャンバーグの記事「ディス・プランの生と死」という記事を読んだプロデューサーのデヴィッド・パットナムが映画化したというもの。
この映画で引き込まれてしまうのは、なんといってもカンボジア人現地助手のディス・プランだ。首都プノンペンがクメール・ルージュによって陥落し、外国人は大使館へ避難し国外退去が許されますが、カンボジア人であるプランは出国できず、二人は強制的に引き裂かれてしまう。クメール・ルージュの囚われの身となったプラン。歴史にのこるような大量虐殺を行ったクメール・ルージュは、極端に純化された農業を基本とする共産主義で、貨幣、学校、宗教、私有財産、都市生活が「堕落」と見なされ、知識人、医師、教師、外国語を話せる者、眼鏡をかけているだけの人間まで、旧体制の残骸とみなされ粛清の対象となり大虐殺が実行された。過去を担ってきた人間を消去しなければならない。ゼロ年から始めるとして幼い子供が権力を握り、処刑を実行したのでした。映画でも少年、少女が銃を持ち大人を処刑する目を覆いたくなるような場面が描かれている。
そんな過酷な状況の中でディス・プランは、外国語を話せるためそうしたことを隠し、もがきながら必死で生きる。その姿に引き込まれてしまう。このプランを演じたのが、ハイン・S・ニョールという人物で、まったくの素人。カルフォルニア在住の亡命者の中から彼を選んだという。彼自身、医師でクメール・ルージュの虐待を受け、家族を失い、プラン同様の筆舌に尽くしがたい辛酸をなめ、命からがら亡命してきた体験を持つ人物だ。だからか、彼の演技が素晴らしくいいのだ。自分が体験した悲劇を世界に伝えたいという使命感でこの映画に出たというから、彼がアカデミー賞助演男優賞を受賞したのも頷けるのだ。
監督のローランド・ジョフィの演出も冴えわたり、まるでドキュメンターを見ているような、リアル感で迫ってくる。ぐいぐい画面に引き込まれる。実話ということもあり、迫真に迫っている。戦争の悲惨さを描くにもこのような伝え方があるのかと思う。1984年の映画だけど今なお新鮮に映る。アメリカの傲慢さ、ベトナム戦争の余波を受けたカンボジアで大量虐殺を起こした悲劇を、アメリカ人記者とカンボジア人現地助手の感動的な友情という形で描いたのが、この映画の成功だろう。アジア人の視点が・・・というのは、作る側が違えば当然生じてくること。映画の出来からすれば、とるに足らないことだ。ラストのジョン・レノンの「イマジン」が感動的にながれるのもいいのだ。
ただ、残念にもディス・プランを演じたハイン・S・ニョールは、自宅前でストリート・ギャングにより1996年殺害されてしまう。彼が演じた映画は傑作として、今も未来も、残り続ける。

