鬼気迫る演技に魅了、ベッソン監督の「ジャンヌ・ダルク」
映画「ジャンヌ・ダルク」(1999年)
■製作年:1999年
■監督:リュック・ベッソン
■出演:ミラ・ジョボヴィッチ、ジョン・マルコヴィッチ。フェイ・ダナウェイ、ダスティン・ホフマン、他
リュック・ベンソン監督の映画「ジャンヌ・ダルク」、魅入ってしまいました。初めてこの映画を見た2000年初頭には、過剰な映画だなという程度の印象しか残っていない。しかし、今あらためて見てみると、ミラ・ジョボヴィッチの演技が鬼気迫り、凄すぎるのに驚かされ、また、賛否あるようですが、私が映画としてとても素晴らしい作品だなと強い感銘を受けたのです
百年戦争の最中、フランスがイングランド軍に圧倒され、国民の士気が低下している。絶望的な状況において、突如、神の啓示を受けた、フランスを救うとジャンヌの出現は、女の子が何、妄想し虚言してるの?というバカにしているフランスの兵士をことごとく、ひっくり返す現象を起こし、オレルアンを奇跡の解放もたらす。
特にオルレアンにおける戦闘シーンは、ミラ・ジョボヴィッチのとり憑くかれたような演技と驚かされ、映像も臨場感もある。虜囚されたのがジャンヌにやられたイングランド軍側という状況下、異端審問における教会とのやり取りは神の啓示を受けたと主張するジャンヌが、聖職者らを圧倒する。あくまでジャンヌは神の啓示にしたがったまでという姿勢を崩さない。
やがて火刑となるまでのジャンヌの内面が描かれる。彼女が見たのは果たして神なのか?あるいは幻覚なのか?フランス軍でさえ成し遂げられなかった奇跡を十代の女性が成し遂げたジャンヌとは、一体どんな人物なのか?信仰とビジョン、精神が正常なのか異常なのか、
トランス状態とは、そして異端とは、イングランド軍はジャンヌを魔女と呼んでいました。こうしたテーマはとても奥深い。見終えた後、私は図書館に行きジャンヌ・ダルクの本を探してしまいました。
映画は、歴史的な正確性について、フィクションが過剰に盛り込まれている点が批判されているようです。例えば、ジャンヌの姉がイギリス軍に殺されるシーンなど、歴史的事実とは異なる描写が見られることなど。また神の啓示や異端審問など宗教的テーマがあるため、見る側の立場により映画における扱い方に疑問符を投げかけることも、賛否の意見が分かれるところかな、と。
でもこの映画は、リュック・ベンソンがジャンヌ・ダルクという歴史上稀有な存在をどうとらえたかということであり、単純に、映画が面白く好きか嫌いかという問題なのだ。そもそもジャンヌ・ダルクという題材がそうしたことを感じさせるのであり、別の監督が作っても別の議論がでてくいるに違いないのだ。事実、ジャンヌ・ダルクは何度も映画化されているようにインスピレーションを与える存在なのだ。何かの象徴として歌の歌詞にもでてくるし…。
ところで、他の事情がわからないので、よくはわかりませんが、フランスはカトリックゆえなのか、ルルドの泉のベルナデッタや奇跡のメダイ教会のカトリーヌなど啓示を受け奇跡を起こし聖女の列に参列する女性が多い気もします。そのなかでもジャンヌ・ダルクは別格なんでしょうね。
ということで、私はリュック・ベンソン監督による「ジャンヌ・ダルク」、ミラ・ジョボヴィッチの鬼気迫る演技に圧倒され、そのように導いた演出をとても面白く感じたのです。お気に入りの1本に加えたいな、と思いました。