俺たちはみんな同じ神を持っている、ただ違うやり方で神につかえているだけ

『ユダヤ教 キリスト教 イスラーム 一神教の連環を解く』菊地章太(ちくま新書 )

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教という三大宗教は一神教であり、ひとつの神様を信仰していますが、この神が同じ神であるということを知らない方も多いのではないでしょうか?ユダヤ教のヤハウェ、キリスト教のゴッド、イスラム教のアッラー、呼びかたは違えど、同じ神を信仰しています。

この本ではそうした神で連なる特徴、いい面も悪い面も、を書いています。たとえば、不寛容、ここから戦争、聖戦が始まり、今もって止むことがない。一方で神は絶対的な存在のため、平等という理念が生まれ、福祉の実践が始まった。

特にイスラムの世界では最も早く福祉の実践が行われ、そうした社会の仕組みが作られたことは、私は知らないでいました。いや、もしかしたら、高校の世界史で習ったのかも知れませんが、すっかり忘れています。

とかく印象がよくないニュースが流れるイスラムの世界ですが、実はそうではなく、とても人に優しい宗教であることが、この本を読むとわかるし、そもそも教理自体が社会の仕組みにまで浸透しているのでイスラム教と呼ぶのが正しいのか?ということも書かれています。

私はそうしたことに詳しくないので、何とも言えませんが、著者が紹介していたボクシングの偉大な世界王者であったモハメド・アリに言及している部分にとても感銘を受けました。

アリがなぜあそこまで人気が高かったのかわかるような気がしました。

「善良なユダヤ教徒だろうと善良なキリスト教徒だろうと善良なイスラム教徒だろうと、その人の宗教には関係なく、善良な人間であればその人は神の祝福を受けられる。

神はすべての人をつくった。彼らの宗教には関係なく。俺たちはみんな同じ神を持っている。ただは違うやり方で神につかえているだけだ。川も湖も海も呼び方は違っているが、どれも水であることに変わりはない。

宗教の場合もそれと同じだ。もし唯一の神を信じているなら、すべての人は同じ家族の一員だということを信じるべきだ。」モハメド・アリはこのように語ったことが書かれています。

モハメド・アリ、かっこいい。なんて素敵な言葉なんだろう。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の不仲は、同じ神から生まれているのだから、兄弟げんかを延々と続けているようなもの?影響力のあったアリゆえの発言だからよりいっそう感銘を受けます。

ユダヤ教 キリスト教 イスラーム: 一神教の連環を解く (ちくま新書)

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