百鬼夜行、妖怪が跋扈する思い出の映画

私が7歳の時に「妖怪百物語」という映画がありました。そのラストシーンの百鬼夜行!妖怪たちが跋扈するシーンは、子供の私にはあまりにも幻想的過ぎて強烈なイメージを残しました。私が怪異といったものに興味があるとするならば、それはこの「妖怪百物語」の影響だろうと思います。50年以上過ぎた今でも忘れ難いのです。私の無意識には、大魔神や妖怪といったものが刻印されているのです(笑)

「妖怪百物語」(1968年)

■公開:1968年・大映
■監督:安田公義
■出演:藤巻潤、高田美和、平泉征、ルーキー新一、林家正蔵

私の子供の頃、妖怪ブームがありました。それは「ゲゲゲの鬼太郎」や「どろろ」のアニメ放送や映画「妖怪百物語」などの公開がきっかけであったんだろうと想像します。この映画の封切りの時は、映画館で観た想い出があります。大画面で繰り広げられる跋扈する魑魅魍魎たちに、ガメラ以上のインパクトを受けた記憶もあります。

そして少年雑誌では妖怪特集が組まれ、それらによって私は妖怪達の名前を憶えていったもんです。土ころび、のっぺらぼう、から傘お化け、油すまし、ぬらりひょん・・・、子供時代に覚えた妖怪の名は50年たって、不思議と名前がスラスラ出てきます。

さて、映画のほうの物語は悪徳官僚(寺社奉行)と悪徳商人の結託によって、土地開発による立ち退き(何を造るのかといえば岡場所、つまり売春施設)を命じられる庶民達の戸惑いと苦悩といった、まあ時代劇にありがちなパターンを踏襲しています。しかし、当時子供であった私はよくは話を理解していなかったようにも思えます。むしろごっつい怖い顔した悪い人、かっこいい正義の人と外見上から識別していたように思います。

今回この映画を再見すると、町娘役の高田美和が寺社奉行の手篭めにされそうなシーンがあるのですが(これは正義の味方の藤巻潤に助けられる)、子供にはその意味がわかったのか、わからなかったのか? 要するに、岡場所建設のシュチエーションといい大人向けの演出が施されているわけです。だから充分、今観ても観るに耐えうる秀作となっています。中々いい作品なんです、これが。

特に秀逸なシーンは最後の妖怪達の百鬼夜行の部分です。妖怪達がスローモーションで踊り跳ねる幻想的な映像は最高に素晴らしい。子供心にも強烈な印象を残しました。妖怪達をそこかしこに宿る精霊、八百万の神と見るならば、その感覚を最高に表現した映像ではないか、そう私は評価したいと思います。

「妖怪大戦争」(1968年)

■公開:1968年・大映
■監督:黒田義之
■出演:青山良彦, 川崎あかね

「妖怪百物語」が好評だったため、その第2弾として製作されたのでしょうか?またまた、妖怪達が勢ぞろいする映画です。(公開時、映画館で観ました)ただ、この映画は一転し子供向け映画となっており、妖怪達が会話し子供達とも仲良くなったりと身近な存在、キャラクター化しています。

妖怪達に対立する構図として、西洋からの外敵・吸血妖怪ダイモンなるものを登場させます。この妖怪は、古代遺跡から復活するのですが、今見るとホラー映画の傑作「エクソシスト」を先取りしているような復活の仕方です。

このダイモンは大柄で強い、これはまさしく日本人から見た西洋人の無意識の感覚を表象しているかのような造形。最終的に一対多の西洋対日本の対決構造になっています。体力的に劣る日本妖怪は、精神面での一致団結を図り総力戦で臨みます。

残念ながら、この映画上記に書いたように、完全にお子様向きに創られてしまっており、名作「妖怪百物語」のような深い味わいはありません。ただ、前作の百鬼夜行の幻想的な部分は踏襲しそこは見る価値ありと思います。

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