新聞記者による骨太チベット・マンダラ探検記

『マンダラ探検 チベット仏教調査』佐藤健(中公文庫)

古本屋で購入した新聞記者であった佐藤健氏(故人)が1981年に書いた本が文庫化された「マンダラ探検・チベット仏教調査」を読みました。と言っても、文庫化されたのも1980年代なので、かなり古い本です。

これは仏教調査団の手記というよりは、一編の冒険記に近い。毎日新聞の記者が何ヵ月もかけてラダックのチベット密教の寺を歩く、歩く、さらに歩く。その旅のドキュメントです。記者の文章なので分厚い本ですが、とても読みやすい。

乾燥した殺伐とした大地と山々。標高も富士山よりも高く3,000mを遥かに超える土地。そして、食料も寝床のその場対応、テントに寝袋。寝ていたら視線を感じたらと思って目を開けたら放牧の山羊が覗き込んでいた(笑)

これは、タフじゃないとできない。私にはとても無理だと思うハードな旅。著者は新聞記者なのですが、記者って何ヵ月も取材ということでスケジュール開けられるのかな?それとも新聞社のいい時代の話?

手記は1979年のことを書いています。翌年には西武美術館でマンダラ展をやるために、再度ラダックを訪れているという。その頃、私は関西にいて大学生だった。なんとなく、当時、一世を風靡したセゾン文化華盛の頃で西武美術館、斬新な企画をやっているな~という記憶があります。

生きていくにはとても大変な不毛の土地、それがチベット。場所は違うけど私も実際にチベットに行って、緑と水が少ない不毛の土地だと実感したので、なぜそこに豊かな仏教文化が根づいたのか不思議な感じがしました。厳しいゆえに信仰が栄えたのか?独自の死生観には驚くばかりです。

風景だけ見ているとチベットは色のない世界だけど、寺院のなかはキラキラ目眩く原色も鮮やかな密教美術が広がっています。いったいこの落差は何?民家はみすぼらしくても寺院は立派。信仰とは?仏教徒は?そうした旅の記憶を思いだし、古い本だけどワクワクしながら一気に読んだのでした。

Follow me!