高度成長に飲み込まれる家族と若者の話

映画「若者のすべて」(1960年)

■製作年:1960年
■監督:ルキノ・ビスコンティ
■出演:アラン・ドロン、レナート・サルヴァトーリ、アニー・ジラルド、他

巨匠ルキノ・ビスコンティの1960年に製作された映画(私が生まれる前年)、主演は若きアラン・ドロン、心優しい青年を演じています。この頃のアラン・ドロンは、ほんとに美形です。いい男過ぎる(笑)

映画は貧しいイタリアの南部から、ひとつの家族がミラノにいる長男を頼ってくるところから始まります。近代化の波に乗って発展していく都市と貧しさが募る農村という対比を描いており、高度成長期に都市部に人が集中していった日本の状況にも通じるような展開となります。

家族は家父である父を失い伝統に従い喪に服している母親を中心に五人兄弟です。農村から出てきた家族には仕事が見つからず、雪が降った日に雪かきの仕事があると家族が意気揚々とした場面が印象的でした。

都市に行けば何とかなるだろう、しかし、現実はそんなに甘くない・・・。一家の苦悩が見え隠れします。そして力はあるけれどだらしない次男は、ボクシングで身をたてるも、女で身を持ち崩す。アラン・ドロン演じる三男は心が優しいものの、兄と関係した女性と恋愛関係になってしまう。嫉妬した兄のあまりにも惨い仕打ちを受けながらも最終的には、兄をかばう彼。兄はその女性と泥沼の関係になり、やがて殺人を犯してしまう。

五人兄弟なのでいろいろなタイプの人物がいて、それぞれの人生模様がある。時代に翻弄され、一家が分断し離ればなれになっていく物語を約3時間の長丁場で描きます。

長編小説を読んだ後のような印象をうける映画でした。後期のビスコンティは自らの出自であるお金には不自由しない貴族をテーマにして描いていますが、このころの彼の作品は、逆に貧しく地の底でもがいている人物を描いていました。

どこかで見たことがあるような、家族の崩壊の物語。それはこの「若者のすべて」を当時見た作家たちが、それに触発され、似たような物語を作った、それを私はどこかで見ているのかも・・・。デジャヴのような感覚がしたこの印象は、ビスコンティの作品を起点としたものなのかもしれません。

人が生きていくということは、その時代の影響を否が応でも受ける。その時代の経済情勢や社会環境などにより、人の運命はどう向き合っていくのかで大きく影響されていくことを、当たり前のことなのかもしれませんが、あらためて認識した映画でした。その意味で現代とは違い、かつ、モノクロの映像ですが、あまり古さを感じさせない重厚かつ骨太な作品と感じた映画でした。

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