古今東西の女神を集めた「女神繚乱」展が面白かった

「女神繚乱 -時空を超えた女神たちの系譜-」展（古代オリエント博物館）

池袋の古代オリエント博物館で「女神繚乱 -時空を超えた女神たちの系譜-」展を開催中で見に行きました（12月５日まで）。女神については、すこし関心があり、関連イベントや書籍などを読んだりしました。展示にはレプリカですが女神となると必ず出てくる「ヴィレンドルフのヴィーナス」もあり、古今東西の女神像を展示した興味深い展覧会でした。その「ヴィレンドルフのヴィーナス」ですが、意外と小さいのに驚きました。

展示されている女神たちは、●メソポタミア･･･イナンナ／イシュタル、ラマシュトゥ　●エジプト･･･イシス、セクメト、タウェレト、バステト、ヘケト　●ギリシャ・ローマ･･･アテナ、アルテミス（ディアナ）、ウェヌス（アプロディテ）、セイレン、デメテル、ニケ（ウィクトリア）、ヘラ、ペルセポネ（コレ）メドゥサ　●インド・仏教･･･サラスヴァティー、パールヴェティー、ラクシュミー（シュリー）、ヤクシ―、ハーリーティー　●日本･･･アマテラス（天照大御神）、弁財天　といった神々。

あらためて、この女神は愛と豊穣のを司る、あの女神は闘いの守護神、その女神は結婚、家庭、出産の守護者･･････とそれぞれ女神に役割が与えられているのを見ると、人間のそれぞれが遭遇する岐路や行動局面に対応しているようにも思え、それが時代を経るとより分化していってるような気がしました。それは人類の文明の発展とともに人々の意識も変化したのにあわせて、神々も変化していったようにも思えます。そして、数万年前の女神は豊穣と多産のシンボルとして、と言われるように胸や臀部が強調されたスリムな女性とは思えない形態をしているのですが、やがて動物と一体化している女神や女性美を感じさせる姿へと変化しているのも感じます。

この女神ですが、女性考古学者のギンブタスによると、古代ヨーロッパの農耕社会では、地母神信仰による母権社会であったが、青銅器時代に父権的な男性原理の社会に置き換わったのだとしています。ただし最近の見解では母権的な社会はなかったという説が有力なようなのですが。著名な神話学者ジョーゼフ・キャンベルによると狩猟を特徴とする地域は男性志向の神話になり、植物採集を特徴とする地域は女性中心の神話でありお互いが共存しあっていたといいます。そこに戦闘型のインド＝ヨーロッパ語族の流入により、男性優位の神話に、さらにセム語系が流入し一神教的な社会へと変動していき、女神の影が薄くなっていったとも。そのあたりの歴史的なこと考古学的なことは、私にはよくはわかりませんが、女神信仰が篤かった時代はそのパワーの象徴が大地であり、天空であったものが、その力が弱まっていくと、男性原理が優位になり世界は建造物へとそのパワーが移行したというのは、なんとなくそうなのかなあと思ったりします。

占星術の世界でも、約2000年という魚座の時代が続いた。イエス・キリストは魚の象徴であるように、この2000年間は大きなスパンでみるとキリスト教の時代であり、かつ、男性優位の時代であったのは間違いないでしょう。それにより世界はこの2000年間で飛躍的に文明を発展させました。生きていくのに根源的な脅威となる飢えや寒さは克服されて生き、さらに、移動は地球規模を気軽に回ることができるようになりました。しかし、一方で殺戮を繰り返してきた時代であるとも言えます。が、地球の歳差運動により魚座の時代から、現在は水瓶座の時代に入ったとも言われています。この水瓶座の時代も2000年近く続くことになるわけですから、どのような変化を人類は、この地球に対して変化を見せていくのでしょうか？女性原理が復権するような時代になっていくのでしょうか？

大地地母神、グレート・マザー、あるいは、ギリシャ神話の女神ガイアに代表されるように、この大地は太古より女性原理に模されてきました。今、ガイアのベースとなる地球環境は悲鳴を上げています。この2000年間の人類の発達が、それはそれで様々な困難を克服する過程でもあり、すごく便利に、かつ、快適にもなったのですが、その反面、地球を傷つけてしまっているのも否めません。先日、国連が制作したという恐竜が自滅する気か？と投げかけた映像にもあるように、このままいくと、地球はもたないんじゃないか？そんなことさえ感じます。なので、これから長く続く水瓶座の時代、未来の人が過去の歴史を振り返ったときに、世紀が変わりそこで大きな文明の軌道修正が入ったのだと、言えるような展開になるといいなと、この女神を振り返る展覧会を見て思ったのでした。