はまる人には、はまるのか「インヒアレント・ヴァイス」

映画「インヒアレント・ヴァイス」(2014年)
■監督:ポール・トーマス・アンダーソン
■出演:ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、キャサリン・ウォーターストン、他
ホアキン・フェニックスが主演したポール・トーマス・アンダーソン監督の『インヒアレント・ヴァイス』。原作はトマス・ピンチョンという作家の原作で、70年代初頭のロサンゼルス、ヒッピー文化の残り香が漂う時代を舞台に、私立探偵ドック・スポーテロが失踪事件を追うという話。ただ、意図的なのか、登場人物も多くて、それゆえにか、物語の筋を追っていくのが、ちょっと難しくなってきて、わかりづらい。あれれ?と肩透かしを食らう印象さえ受けるけど、どこか不思議な魅力を持った作品です。
ホアキン・フェニックス演じるドックは、ケンかが強い、頭が切れる、クールな二枚目とは程遠い、ぼさぼさの髪の毛、だらしなさ、要領の悪さ、ドラッグに手は出すはで、よくある名探偵では、けっしてなく、どこか無能にも見えるような脱力ある探偵を演じているのが大きな特徴ともいえます。ホアキン・フェニックスの飄々とした存在感自体がこの映画の魅力とも言えそうな感じです。だからか、見てる側は感情移入がしづらい部分の多々あり、ホアキン・フェニックスの力の抜けた感じが、なんとも言えずいいと感じなかったら、筋もわかりづらい部分もあり、カタルシスもないので、もやもやとしてしまう映画とも言えそうです。
『インヒアレント・ヴァイス』は、最初からそうしたことを狙った、雰囲気を味わう、細部にしびれる映画なのかもしれません。だから、はまる人ははまってしまう映画と言えそうです。『インヒアレント・ヴァイス』は終わりゆくヒッピー文化と変わっていくアメリカ社会の空気を、映画的に整理するのではなくて、混乱したまま提示することにより、フォアキン演じる探偵と同じ目線になっていく、ある種の実験的な詩のような作品なのかもしれません。ポール・トーマス・アンダーソン監督のさりげない演出の感性の鋭さ、面白さはビンビンに感じるので、はまる人は、はまってしまう映画と言えのかもしれません。

