TAOは気楽という宇宙観
「タオは笑っている 愉快な公案集」R・M・スマリヤン著 ( 工作舎 ) を読む
タオ(TAO)=道
日本で見ることのできる、気功も陰陽五行も易占いも、中国のタオ(TAO)→道教から派生してきたもの。このタオという概念、宇宙観は、日本人にとって文化の中に入っているし、受け入れやすい概念。およそ、柔道、剣道、茶道、華道・・・など道とつくのは、このタオの概念に通じるものがあります。
タオは中国の伝統的、根源的、自然発生的で開祖もいなく民衆に脈々根づいてきた宗教である道教の根本にあるものです。道教は開祖はいないけど老子と荘子が概念をまとめたとされています。
この「タオは笑っている」の著者は著名な数学者であり、ニューエイジブームが80年代に起こったときに、翻訳され日本にも紹介されました。その時はそんな本もあるよね、くらいの印象でしたが、時を経て年齢も重ね、タオというキーワードが私の中に大きな位置を占めてきているのを感じています。
タオの太極図がシンプルに語り掛けます。陰極まれば陽となる。今、日本は様々な試練により陰のイメージがあります。しかし、日本人はすごくしっかりした民族なので、やがて陽をむかえると思います。それまでの辛抱。
タオとは言葉で説明できないもの。だから、例え話から漠然とイメージするしかありません。その曖昧模糊とした感じが、ある種、肌感覚でわかるような、あるいは、道遠しと感じるか・・・。直感的にイメージできるような気がします。
道教なるものは、現象面としては日本に馴染みがないかもしれませんが、実はベースになる部分で多大な影響を受けているということ。有名な陰陽師の安倍晴明、陰陽道も道教の概念がそのベースになっています。そういえば、生前、15年以上前に、舩井幸雄にどんな思想に影響を受けているのですか?と聞いたら神仙道と直接、本人の口から聞いたことがあります。神仙道=道教です。
タオは笑っている・・・まるで謎かけ問答のような、でも腹の底でどこかそうだよなと感じるこの感覚。「笑っている」ということで、この本で出会った愉快な言葉を列挙しました。
●禅は中国のタオとインドの仏教をまぜ合わせ、日本人がこしょうと塩(とくにこしょう)で味つけしたようなものだ。
●タオは神秘の女……。
●考えてもみるがいい。ビタミンを必要とするときに、ビタミンをとるかわりにビタミンを崇拝するだろうか。水に棲息する魚は水を崇拝したりしない。タオに生きる賢人もけっしてタオを崇拝しない。
●かれらは私のことをタオと呼んだ。そしてわたしがものごとを行うのではなく、すべてのことがわたしを通じてなされるのだと言った。これをもっと現代風に言えばつぎのようになる。わたしは宇宙の流れの源というより流れそのものなのだ。人間のいまの頭で考えられる範囲で言えば神とは啓蒙の過程そのものだ、ということになろう。
●タオイズムには「タオはなにも為さないがすべてはタオを通じて為される」という格言がある。その心は「努力なしの行為」に近い。タオはまさに努力を必要とせずになにげなく作用するものだ。
●いまの人生が夢で、あるとき目覚めてみたら肉体はどこか別のところにあり、それが人間でも蝶でも哺乳類でもなく生きものでさえなく、コンピュータだったらどうだろう!
●タオは目的をもって作用するのではなく、自然発生的に作用する。
「タオは笑っている 愉快な公案集」R・M・スマリヤン著、桜内篤子訳 ( 工作舎 ) より引用