不理解の見えない壁を乗り越えると、喜びに満ちた世界が・・・
映画「ベルリン・天使の詩」(1987年)
■製作年:1987年
■監督:ヴィム・ヴェンダース
■出演:ブルーノ・ガンツ、ピーター・フォーク、ソルヴェーグ・ドマルタン、他
男女が結び合うことから生まれる大きな力の存在への気づき。80年代後半にミニシアター系で大ヒットを飛ばしたヴィム・ヴェンダース監督の映画「ベルリン・天使の詩」。まだ、東西に分かれていたベルリンが舞台で、主人公である天使の世界は、モノクロームで彼らは永遠の時間を生きる超自然的な存在。モノクロームで描かれたというのが興味深いところです。
その天使の一人がサーカスで活躍する女性に恋をして天使の世界からこの世界に降りてくる話。この映画で描かれていた天使は、男性であり天使というより、精霊的なものに近いように感じましたが、人恋しく、人間の女性に恋をして、いわゆる、堕天使となったわけです。堕天使といってもサタンではありません。
このサーカスで働く女性は、目には見えていなくても夢の中でこの天使と会っていて初対面でも運命の男性と悟る・・・。私はこの映画で男女のパートナーシップ、境界ということについて感じ考えさせられました。「女性性と男性性」「精神と肉体」といった二項対立の融合による生の肯定ということ。片方の世界だけだとモノクロームの世界であり、実に味気ない。世界はカラフルというのに。
ベルリンの壁と天使と人の見えない壁、あるいは男女の壁、カラーとモノクロームの世界、美と無味乾燥な世界、天使と人間、そして男と女の関係性、そして、運命の出会い、新しい人生・・・。
不理解をベースにした見えない壁を乗り越えるとそこには美しく喜びに満ちた世界が開けてくる。分断というキーワードが浮上し、AIが世の中を変えると言われ、通貨という概念も揺らぎつつある時代。
「ベルリン・天使の詩」はそんなことを感じさせてくれる映画と思いました。