死とエロスが交錯する地に立つ壇蜜

『死とエロスの旅』壇蜜(集英社)

私はドキュメンタリー番組など気になったものは、いつ見るかはわかないのですが、録画しておくことが多々あります。先日、書店をブラブラしていたらタレントの壇蜜さんの「死とエロスの旅」という本を見かけました。この本は、NHKの番組で壇蜜さんが、ネパール、メキシコ、タイに旅したものをエッセイ風にまとめたものでした。

あれ?っと思ったのはその壇蜜さんが旅した番組を、録画していたような記憶があったからです。気になったのであれこれ探してみたら、やっぱり録画していました。放送された年は6年前の2014年でした(これを書いているのが2020年)。それも録画していたのがネパールを旅した回でした。ネパール

ネパールは聖地巡礼の旅で行ったことがある国ではありませんか。この偶然の一致に胸躍らせました。まさか6年前に録画していた番組を見ることもなくそのままにしておき、ネパールへ行くと決まっても思い出さず、たまたま書店で見かけた本で記憶がよみがえり、まずはその番組を探し、見て、とてもおもしろかったので、再び本屋に行きそれを購入。

壇蜜さんはご存じのようにセクシータレントとして売り出しましたが、その経歴は異色で遺体衛生保全士という民間の資格を取り、解剖の助手の仕事をしていたといいます。死を感じ向き合う仕事、そしてセクシーな過激な写真で人気が出る。死とエロス、エロスは生の誕生に繋がり、やがて肉体は滅ぶ。まさにその世界を体現しているのが壇蜜さんではないでしょうか?

壇蜜さんのネパールの旅は、火葬をするヒンドゥー教寺院、男女が抱きあったヤブユムの像を祀るチベット仏教寺院、動物の生贄を捧げるヒンドゥー教のカリー神を祀る寺院の祭、生き神クマリ、チノと呼ばれるネパール独自の占い師などなど、テーマがテーマなだけに、かなり濃い場所に行ったと思います。

驚くのは動物の生贄が捧げられる目を覆いたくなるようなカリー神の寺院の祭で堂々としていたこと。生贄というものに慣れていない我々は冷静な目ではとても見ることができないでしょう。

<死>というものを強烈に感じさせる場面でもひょうひょうとしている感じの壇蜜さんは、異色な経歴とそれを深い部分で受け入れている方だと思いました。そして文章も文学的なセンスに溢れ秀逸です。注目されるにはそれなりの理由があるということがわかりました。

ネパールでは輪廻転生を信じているので、墓はなく遺体は火葬され、その灰はガンジス川に繋がる聖なる川に流されるのです。

壇蜜さんは著書でこのように締めていました。『他者を受け入れ、他の宗教を受け入れ、死をも受け入れる。この国の人々の寛容さが心に刻まれた旅だった。』

◆本の内容◆

<第1章> ネパール・・・・・聖なる都・カトマンズ。血を望むカーリー女神、ヒンドゥー教の寺院、かつての王宮での女神・クマリ、歓喜仏・ヤブユムの寺院で乞う性愛をこえた悟りの教え、占星術チノ他。

<第2章> メキシコ・・・・・・太陽と情熱の国・メキシコ。「死者」の祭り、アステカの神殿の上に立つ大聖堂、「生贄」の風習、性別を超えた”ムシェ“の存在、風を操るシャーマン、褐色のマリア他。

<第3章> タイ・・・・・・生と死の端境・バンコク。地獄を具現化したテーマパーク、葬儀で出会う男女、暮らしに溶け込む性的マイノリティーの人々、エイズ患者を無償で受け入れる施設他。

この本を読んでいるとメキシコやタイにもいつか行ってみたいなと思います。

放送された番組のタイトル
死とエロスの旅

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