タロットの象徴的世界に触発されたベリーダンス

アレハンドロ・ホドロフスキー監督は、映画『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』などで知られる鬼才として有名です。この『エル・トポ』はジョン・レノンにも影響を与えたことでも知られており、私も初めてこの映画を観たときに、こんな映画を作る監督がいたのか!とびっくりしました。以来、ホドロフスキーの作品は私の好きな映画のひとつとなりました。

そのホドロフスキーですが、実は、タロットカードにも興味を持っており、映画創作の力にもなっているようで、彼の幻想的な映像や意表をつく展開は、カードからもインスピレーションを得ていることが映画をみるとわかります。ホドロフスキーは、その知識を「タロットの宇宙」という書物にまとめています。それを初めて書店で見たとき、その分厚さに驚きましたが、あのホドロフスキーがタロットに言及した本ということで、私の本棚の一員として加わったのです。彼は、映画監督としてだけでなく、タロットリーダーとしても人々に影響を与えているのです。

話はかわり、私はオーブリー・ビアズリーの挿絵とともに、オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」に惹かれるものがあります。サロメはダンスと引き換えに、その褒美として、キリストを洗礼したヨハネの首を要求した魔性の女=ファム・ファタールです。サロメが踊ったダンスとは?舞台は中東地域の話なので、たぶん、ベリーダンスに近かったのだろうと・・・・。なので私は、ビアズリー⇒オスカー・ワイルド⇒サロメ⇒ベリーダンスと興味の視点が移動します。また一方で、映画⇒ホドロフスキー⇒タロットと興味の視点が移動したのですが、このベリー・ダンスとタロットの興味の視点がぶつかったのです。

まず、ベリーダンスですが、発祥がエジプトともジプシーともいわれておりますが、ベリーダンスを日本に紹介した草分け的な存在で、ダンサーのMIHOさんという方がいます。沖縄出身で一世を風靡したSという女性グループのT・Uさんにもベリーダンスを教えていたことがある方です。そのMIHOさんが、ホドロフスキーを敬愛しており、自らもタロット・リーダーであり、ホドロフスキーの「タロットの宇宙」に触発されて、ベリーダンスという自分のフィールドに、幾人かのダンサーを終結させて「タロットの宇宙」というパフォーマンスを上演したことがあると、webで知りました。ここで私の自由な2つの視点が出会ったのです。

私はなんとか、それが再演され映像に収録することができないかと思い、直接アプローチをして、コロナ禍の後半、その実現に成功したのです。演目はタロットカードの大アルカナという22枚の各カーをテーマにダンサーが独自解釈でパフォーマンスを見せてくれるのですが、それを見ていて、これは素晴らしいな!と思いました。ダンサーたちのクリエイティブ性が爆発しているなと思いました。

タロットは、象徴的な絵柄により占いなどにも使われるシンボリックな言語であり、ルネッサンスの影響、ユダヤ神秘主義のカバラの影響などなど、そこに込められた象意や思想背景はとても興味深いものがあります。私の知り合いのタロット研究者によれば、そこには異端とされたグノーシス主義やカタリ派の思想が入っているといいます。解釈は自由自在であり、それを提供しえるタロットは奥深いということ。そのシンボリックな言語に触発されたベリーダンスも、同様に身体的な表現で、言語ではないシンボリックなもの。この両者が組み合わせることで、新たな意味やエネルギーが生まれ得るわけで、私にとっては忘れえぬパフォーマンスとなりました。その「タロットの宇宙」の予告映像を、ぜひご覧になっつてみてください。

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