母親の呪縛に囚われた魔術師の不幸『サンタ・サングレ/聖なる血』
『サンタ・サングレ/聖なる血』(1989年)
■製作年:1989年
■監督:アレハンドロ・ホドロフスキー
■出演:アクセル・ホドロフスキー、ガイ・ストックウェル、ブランカ・グエッラ、他
アレハンドロ・ホドロフスキー、その名前は「エル・トポ」をはじめとする独特なタッチで観客の心を惹き付けるカルト映画の巨人として知られる監督。そんなに作品は多くないが、いずれも観たものに強烈な印象を残す。
この「サンタ・サングレ/聖なる血」も強烈なイメージを提供する。ホドロフスキーがメキシコで20人もの女性を殺害し庭に埋めたという殺人犯に取材インタビューし、そこから着想を得たというもののよう。とはいいながらも実録もののオドロオドロシイものではなく、象徴的表現に満ちたイメージ重視のシュルレアリスムの絵のような映画という感じ。
いきなりの冒頭が精神病棟の住人となった主人公が登場、彼はサーカスの一座の団長の息子で、そこにタイムスリップする。子供時代に両親の破天荒な行動の影響を受ける。サーカスには異形の者らが集い芸を披露する環境にいる。一度見たら忘れられない全身に刺青を施した肉感的な女性がいて、父親と浮気の関係にある。
母親は両腕がレイプによって切り落とされた女性を聖女として崇める奇妙なカトリックの教会を信仰している。そこの教会の真ん中には聖なる女性の血によるという真っ赤なプールがある。神父をこれは偽物だといい、自治体によって破壊されてしまう。
母親は全身刺青の女と父親が浮気をしている現場に行くも、逆に父親から両腕を切り落とされてしまう。聖なる女性と同じになってしまう。
やがて子供は成人しマジシャンとなるも、母親の両腕となり彼女の呪縛から離れることができない。ある日、男勝りの女子プロレスラーを自宅に招くも、母親が登場しその女を殺せと命じる。青年は意志とは裏腹に手が動き殺害してしまう。苦しむ青年の前に子供時代の天使的な存在であった女性が現れると、実は母親は両腕を切り落とされた時に既に死んでいたということがわかる。つまり青年は母親の幻影に悩まされ続け、殺人を犯していたのだ。母親の呪縛により自らをおとしめていた。
母親のへのコンプレックスはヒッチコックの「サイコ」にみられるように、時に子供に大きく影響し、異常な状態へとつき動かしてしまう。母と子の切れない関係、ここでは母親はモンスターとして子供の精神を犯していたということになる。
ところでアレハンドロ・ホドロフスキーは、タロットを自在にあつかうタロット・リーダーでもあり、彼が作り出す映画のなかでもタロットがたびたび登場する。彼が出したとても分厚い本が「タロットの宇宙」。タロット世界観を精緻に解説している。
そのアレハンドロ・ホドロフスキーの「タロットの宇宙」に触発されたのが、ベリーダンサーでタロット鑑定士のMIHOさん。MIHOさんは日本のベリーダンサー界の第一人者。MIHOさんはタロットの大アルカナとよばれる象徴的な絵を配したカード22枚をベリーダンサー達と、タロットの神秘的な世界をダンスで表現、クリエイティブ・マインドを大いに刺激してくれるパフォーマンスを見せてくれました。それが「タロットの宇宙」、現在オンラインで配信中です。ぜひこのイメージが豊饒な世界を見てみてください!