憎しみのみの少年、悲しみしかない戦争「僕の村は戦場だった」
映画「僕の村は戦場だった」(1962年)
■製作年:1962年
■監督:アンドレイ・タルコフスキー
■出演:コーリャ・ブルリャーエフ、バレンティン・ズブコフ、E・ジャリコフ、他
アンドレイ・タルコフスキー監督の長編デビュー作が「僕の村は戦場だった」。これまでタルコフスキーの映画を何本か見てきたが、この作品が一番わかりやすかったのですが、一方で突然、話が飛ぶように展開するので、見ていて、なんでかようわからんと筋が繋がりづらい部分もあったのも事実。
戦争の惨さを描くには十分なインパクトを持った内容でした。旧ソ連とドイツが戦った第二次世界大戦。母親と妹を殺された少年イワンは、その復讐の念にとらわれて子供らしさのみじんもない。人格までもその悲しさにより変わってしまった。今、ロシアとウクライナの戦争が起こっていますが、この少年と同じような思いを経験した人もいるのではないだろうか?戦争はどんなことであれ、よくない。
この「僕の村は戦場だった」を見ていると、のちのタルコフスキーの映画に出てくる象徴的なものを見ることができます。そして、見ているものをアッと言わせるようなイメージ表現も。空中浮遊、水、廃墟・・・そこに見ることができる他の映画監督では表現できないような、映像芸術ともいえる数々。
ドイツに対する憎しみそのものの存在となったイワン少年。過去の楽しかった日々が映し出されると、その理不尽さにいたたまれなくなります。そして戦争が終わり、実際の映像が流れたのもインパクトがありましたが、そこにイワン少年が死刑とされた書類が映し出された部分は衝撃的。
戦争なんて百害あって一利なし。