花火が舞う夜、ポンヌフの橋の上で踊る映像が素晴らしい！「ポンヌフの恋人」

映画「ポンヌフの恋人」（1991年）

■製作年：1991年
■監督：レオス・カラックス
■出演：ドニ・ラヴァン、ジュリエット・ビノシュ、他

レオス・カラックス監督による映画、アレックス３部作の最後は「ポンヌフの恋人」。「汚れた血」で天使のような可愛さを見せたジュリエット・ビノシュは、この映画では汚れ役に大胆チャレンジしています。女優としてただ可愛いだけではない、ただきれいだけではない、まさに女優道開眼の役どころではなかったのかな、と想像させるに十分な役と演技でした。

一方のアレックスを演じるドニ・ラヴァンも前２作よりさらに怪演ぶりを見せており、こちらもただ者ではない役者ぶりを見せています。感情を内に殺した独特の演技はすばらしいし、稀有な個性でもあると思いました。この「ポンヌフの恋人」はもちろんカラックスの構想と演出なくてはできなかったのですが、なによりも主演の２人の俳優の演技なくしてここまで完成度の高い作品になり得なかったに違いないでしょう。彼等をして真の完成をみた？そう言いたくなるほど役者の存在感が目立った映画でした。

加えてカラックス監督の力量の成せる技も･･･。花火が舞う夜、ポンヌフの橋の上で踊るカップルの映像は映画史に残る映像といっても過言ではないでしょう。わけもわからず鳥肌が立ちました。それ以外にも映像的感性に優れたカラックスはしびれるような一瞬を現出させています。まさにしびれるような映像です。例を出せば無数のポスターが燃えるシーン、ラストの有名なタイタニックを想起させるシーン（これは「ポンヌフの恋人」の方が先）などなど。シュールな画面にありきたりではない凝った構図は、カラックス流というのがピッタリです。

私は映画が公開された90年代から、「ポンヌフの恋人」というタイトルからロマンティックな映画なのかなとずっと思っていました。タイトルからくる勝手な印象で、長い間、食わず嫌いでいたのです。しかし、いざ食ってみるとなんと美味しいものだったんだと。まさか改修工事のポンヌフの橋に住む若き浮浪者の男女の切ないまでの話だったとは…。期待していなかった分、映画は最高に面白かったです。