映像が、イコール音楽であり、イコール気分であり、イコール詩である映画「汚れた血」

映画「汚れた血」(1986年)

■製作年:1986年
■監督:レオス・カラックス
■出演:ドニ・ラヴァン、ジュリエット・ビノシュ、ミシェル・ピッコリ

煌く才能を見せつけるレオス・カラックス監督、デビュー2作目である「汚れた血」。この映画の前後作とともにアレックス3部作と呼ばれています。そのアレックスを演じるドニ・ララヴァンがとにかく強烈な個性を放っています。こんな凄い俳優はめったにいないんじゃないかと。存在するということそのものが、画面から彼の心象を語っているかのよう。

映像もゴダールの再来と言われたように独特のタッチが感性を刺激する。特にデヴィッド・ボウイの曲「モダン・ラヴ」にのって街を疾走するシーンなんかは、びっくりします。シビレる映像とは、このような映像をさすのだと思いました。そのセンスはどこから生まれてくるのだろう?ただものではないということだけわかります(笑)

カラックス監督の映像は、イコール音楽であり、イコール気分であり、イコール詩なのであります。文字で書くことが難しいのですが、台詞は台詞のようで台詞ではない、ポエムを紡いでいるのだ、いや引用の嵐なのだ、いや気分のモノローグなのだと、その枠組み自体を壊しているものの、けっして不十分ではなく映し出される映像に台詞はピッタリとフィットしている。それはミシンとコウモリ傘の幸福な出会いのように…。

演技が研ぎ澄まされ、映像が研ぎ澄まされ、台詞が研ぎ澄まされ、微妙なズレ、微妙な位置、微妙な展開で全体を構成しているというカラックスの映像の妙。おまけに色でもって近未来の空気感を表現するそのセンス!ゴダール的とカラックスは言われるようですが、私は正直ゴダールよりもこのカラックスの映像の方が好きだなと思います。ゴダールは突き詰めすぎて、簡単には伺い知ることができない世界へと行ってしまったと私は感じるのですが、カラックスはその手前で我々を挑発している?比較されるゴダールとカラックスを並べてみて、そう勝手に思っているわけです。

ところで特筆ものは若きジュリエット・ビノシュです。とにかく妖精のように可愛い。信じられないくらいの可愛さ。可愛すぎるジュリエット・ビノシュが手を広げて走っていくラストシーンは忘れがたい印象を残したのでした。

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