人生に意味なんてあるのかと考え続けるのが人生なのか?

映画「ミスティック・リバー」(2003年)

■製作年:2003年
■監督:クリント・イーストウッド
■出演:ショー・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン、他

クリント・イーストウッドの映画はどれも王道と言える作品が多い。その中でこの「ミスティック・リバー」はサスペンス映画の部類。それもけっこう暗く重い感じで、生きる力を謳っている最近の映画とは、ちょっと違うテイストでした。雰囲気は違っても、さすがクリント・イーストウッドといったところで、秀逸な出来。

私はその作劇に感心しながら見たのですが、人によっては構成がやや複雑になっていることやテーマの根底に幼児性愛という異常性があること、最終的に救いをあまり感じることができないなどの印象を持つ可能性もあり、あまりこの映画を好まないという方も多いだろうなと思いました。しかし、クリント・イーストウッドはそうしたものを吹き飛ばすほどの骨太な演出で素晴らしい映画を作っているというのが私の感想です。

クリント・イーストウッドが何故、幼児性愛という異常な題材を選んだのかはわかりません。アメリカにはこうしたおぞましい犯罪が多いのでしょうか?イーストウッドは警告的な意味合いを込めてこの映画を撮ったのでしょうか?

主な登場人物は3人、子供の頃の仲良し3人組は幼い時にある事件に巻き込まれます。というか3人のうち1人が警察を装った男らに拉致され監禁されてしまいます。そこで受けた虐待…。命からがらで逃げたものの彼の心には消えることのない暗いトラウマが打ち込まれることになります。それから25年後、それぞれが大人になり、彼らの交流はなくなりますが、彼らの中でショー・ペン演じる街の愚連隊あがりのジミーという男の娘が殺害されたことで、再び彼ら3人が交わることになります。

一体誰が娘を殺したのだ、怒りと復讐に燃えるジミーは犯人を探し始めます。仲間の1人は刑事になっており、その犯人探しに加わります。疑われるのはどうしょうもないトラウマを背負ったティム・ロビンス演じるデイヴ。果たして本当の犯人は?
このように殺人事件の犯人は誰だと疑惑を孕みつつサスペンスタッチで進むこの映画。しかし、大きな誤解が更なる悲劇を生んでいくという、救いのない展開。

子供の頃のデイヴを誘拐し監禁した異常者の指輪には十字架マークが刻まれていました。娘を殺された背中には大きな十字架のタトゥーが彫られていました。人は抗うことのできない罪を背負った生き物なのだ、さらに膨らませて言えば、人生に意味なんてあるのかと考え続けるのが人生ということを、この重苦しい惨劇の話を通してクリント・イーストウッドは見る者に暗示しているのでしょうか?この十字架という象徴は・・・。

クリント・イーストウッドが監督した映画はどれも素晴らしく、かつ、テーマも多様で裏切られません。まさにミスター・シネマという存在なのです。この「ミスティック・リバー」においては役者の演技が素晴らしくショー・ペンがアカデミー賞主演男優賞を、ティム・ロビンスが助演男優賞を受賞しているのも頷けます。

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