罪深き女性とは描かれていない聖なる女性の物語

映画「マグダラのマリア」(2018年)

■製作年:2018年
■監督:ガース・デイビス
■出演:ルーニー・マーラ、ホアキン・フェニックス、キウェテル・イジョフォー、他

マグダラのマリアを主人公に描いた映画。これまでマグダラのマリアは、イエス・キリストによって回心した罪深い女性、娼婦と言われ続け、近年になりようやく聖女として認められた聖書に登場する女性です。この映画はそうした負の側面を背負わされマグダラのマリアではない別の解釈による構成となっています。

イスラエルのマグダラで暮らすマリアは、男性に支配された社会でどこか馴染まないものを抱きながら生活をしていました。そこへ手かざしと呼ばれているイエス・キリストの評判を聞き、彼の説法を聞きに行きます。イエスの起こす奇跡を目の当たりにしたマリアは、神に仕えることを決意。家族のもとを離れ、イエスや弟子たちとともに伝導の旅に出ます。

そこにはマグダラのマリアは娼婦であったとか罪深い女性という背景はありません。ただ、心がここにない、何か違うというものを胸に抱いき、家族とも離れその何物かを知りたいという家長父的な制度において、その枠を出ようとする行動的な女性として描かれています。

やがて死者を蘇らせたイエスは、救世主として民衆から崇められエルサレムに入り、十字架にかけられる。マグダラのマリアは復活したイエスと出会い、さらなる信仰の道を歩むことに。マグダラのマリアはキリスト教における大きな信仰ポイントであるイエス復活の、最初の目撃者であり、それを弟子たちに伝える最初の使徒になるのです。この映画ではイエスのエピソードの多くは描かれず、マグダラのマリアを通したイエスを見ることになりますが、それを見ている限り、イエスはマグダラのマリアをとても信頼していたと読みとれます

つまりこの映画はグノーシス主義の影響で作られたという聖書の外典「マリアによる福音書」を参考にしているかのようです。いずれもこれら書物はマグダラのマリアは使徒たちと対等かそれ以上に描かれていること、そして弟子のペテロの嫉妬なども書かれているからです。映画では直接的ではありませんが、それをにおわすような描写がありました。

ところで、映画のキャスティングがユニークと言えます。「ドラゴン・タトゥーの女」でモヒカンの強烈な女性を演じたルーニー・マーラがマグダラのマリアを、「ジョーカー」で胸が詰まるような怪演を見せたホアキン・フェニックスがイエス・キリストを演じています。この二人が過去に演じ評価を得た役どころは、いずれも尋常ではない、あちら側に行ってしまっているかのような狂気を孕んだ人物です。その個性派二人が、聖者を演じているので妙な取り合わせ感が画面から出ていました。

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