想像力が全開!パフォーマンスで感じる「ふしぎの国のアリス」
ダンス公演「ふしぎの国のアリス」(新国立劇場)
■日時:2022年3月19日、13時~
■構成・演出:小野寺修二
■キャスト:カンパニー・デラシネラ
新国立劇場で上演されたパントマイム版「ふしぎの国のアリス」を見てきました。ただでさえ、ハチャメチャでへんてこりんなアリスの世界。そこに台詞はほとんどない形、パフォーマーの所作で楽しむ感じの内容でした。
ウサギの穴に落ちた後の不思議な世界は抽象的な装置を巧みに使って行われるので、観る側の想像力を100%フル活用して楽しむしかない。上演される演舞と言えばいいのか、その動きは練りに練られたんだろうなと、そのひとつひとつに感嘆す。
身体だけで表現するのは、素人が考えても、まずはパフォーマーの見せる能力が必要です。おおっ、思わず声が出るような動きが感動を呼びます。そして、見せるためのアイデア。このアイデアがとても大きいような気がします。一つのシンプルな装置を、いろいろなものに見立てて観客の想像力を刺激する。そして、全体としてテーマとなるものを伝えなくてはならない。これも大変ですね。演出の力量が問われます。
そうした点でこの「ふしぎの国のアリス」はタップリ2時間、飽きさせずに魅せてくれました。原作のへんてこりんさをどう表現するのか?原作→それを様々な要素に削ぎ落とす→エッセンスをパフォーマーの演舞とシンプルな装置で表現する。なるほどルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」は、このように表現するされたのかと、とても新鮮な感じになりました。
演出の小野寺修二氏は配られたパンフに『アリスは熟考するより先に身体が動き、おそらく本人も行動の説明がつかない決断の早さで新しい世界に足を踏み入れていきます。他人任せでなく自らが選び取った行動は 、意外にも言葉を介在せず直感で決めている気がします。現在この先が見えない時間の中で、その姿勢は眩しくもあります。「ふしぎの国のアリス」には、失礼な他人がたくさん登場し、彼らは皆、全くもって意味不明なそして役に立たない行動をする人たちばかりですが、それでもその一つ一つと対峙し、自らの内側から湧き上がるものに従って生きるキャラクターから、大きなエネルギーを受け取った気がします。』と寄稿しています。アリスの魅力を的確に指摘していると思いました。