1970年代、パニック漫画の傑作「漂流教室」

漫画「漂流教室」楳図かずお

東京シティビューで開催されている「楳図かずお大美術展」を見たことにより、とても刺激をうけたので、楳図かずおの漫画を読みたくなりました。会場で「漂流教室」と「14歳」を購入。この作品は対になっているということらしい。で、まずは「漂流教室」から読んでみることに。

「漂流教室」は1972年~74年にかけて「少年サンデー」に連載されていた。当時、子供だった私は、その世界観に驚きながら、怖いもの見たさのような感覚で、それを読んでいたような記憶があります。ただ通して読んだことはなく、今回が初めてでした。

一気に読んでしまうのですが、それは次はどうなる、次は?とハラハラさせる展開と考えさせられる展開が交互に押し寄せてくる。楳図かずおのストーリー構成能力はすごいなと感じます。

しかし、全体としてはパニック漫画であり、人間の醜いエゴが剝き出しに描かれて暗く憂鬱な気分になってきます。読んでいる最中、読み終えた後は陽気な気分にはなれません。どこか喉に骨がひっかかっているような。未来の地球は砂漠と化し、食料の限界も見えてくる。飢えはやがてカニバリズムに繋がり、ここまで少年漫画で描いていいのだろうか、と。

楳図かずおは、先見性があるなと感じたのは、未来の地球では人類は滅亡してしまい、その主な原因を核戦争とかではなく、環境破壊としており気候変動によるようなことで描いています。これは、このまま便利さのみを限りなく追及していくとやがて人類は滅んでしまうよというメッセージであり、それが1970年代に描かれているということが現代的であると思いました。

さらに、現在、過去、未来という時間が同次元で描かれ、引き裂かれた現代という時間にいる母と未来という時間にいる息子が、時空を超えて子供のピンチの時に繋がり、パラレルワールドとして存在しているということを描いて見せたのも、驚きでした。

ところで、「漂流教室」の主人公の少年は、勇気と正義を持っており、それはとても力強い。パニック時のリーダーとは?を感じさせてくれるのですが、その彼に映画 「スタンド・バイ・ミー」のリバー・フェニックス演じる少年像がそこにダブって見えてきました。皆のために恐怖と戦いながら行動する少年は美しくほれぼれします。

冒頭の母と子の「もう二度と帰ってこないから!」と親子喧嘩で言い捨てて学校に行く場面と、ラストの母が夜空を駆け上がっていく少年を夢見て見送っている、愛があり切ない場面が、情感たっぷりにつながっており、読了はじわーとくるものがあるのでした。

「楳図かずお大美術展」より

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