眼も喜ぶ?聖なる場所+芸術をピックアップした雑誌
特集「とっておきの聖地」(「芸術新潮」2021年8月号)
「聖地」とは?
以前私はこのブログで宗教学者の植島啓司氏の「聖地の想像力-人はなぜ聖地をめざすのか」という書物で、その定義を9つの要素で定義していました。(記事「世界軸としての聖地はメモリーバンク機能を持つ場所」)
01 聖地はわずか1センチたりとも場所を移動しない。
02 聖地はきわめてシンプルな石組をメルクマ-ルとする。
03 聖地は「この世に存在しない場所」である。
04 聖地は光の記憶をたどる場所である。
05 聖地は「もうひとつのネットワーク」を形成する。
06 聖地には世界軸が貫通しており、一種のメモリーバンク(記憶装置)として機能する。
07 聖地は母胎回帰願望と結びつく。
08 聖地とは夢見の場所である。
09 聖地では感覚の再編成が行われる。
あるいは、同じくこのブログでユング心理学者の故・秋山さと子氏の「聖なる次元」という書物から、その聖なる次元に関する言及した文章を引用しました。(記事「聖なるものは我々の幻想や夢の中で活躍している」)
★聖なる次元は人間の理性による理解をはるかに越えるものであるにかかわらず、人間はこれを感情的に体験しそこに価値をみいだすことができる。
★聖なる次元は日常の次元とは別にそれ自体で自律的に存在しているが、問題はこの二つの次元のかかわりの中にあるのであって、そこにきらめく火花の中に人間の生命が流れ、創造が生まれる。
2021年8月号の「美術新潮」の特集が「とっておきの聖地」。芸術系の月刊誌なので、その聖地に関するピックアップの仕方の要素に「そこに芸術のある」とあります。記事には、「芸術とはそもそも聖なる場所をさらに荘厳すべくなされた人間の営み」とあるように、多くの芸術作品(美術、建築)は、歴史的にも宗教と大きく結びついている故に、当然のことなのだと思います。
どれも行ったところがない場所ばかりなので、きっとその現場に立ったのなら、神聖な感覚的になるとともに、眼が喜ぶんでしょうね!以下はピックアップされた聖地。
<古代編>
・ギョベックリ・テペ遺跡(トルコ)
・デルポイ(ギリシャ)
・ペトラ遺跡(ヨルダン)
<中世>
・サン・ヴィターレ聖堂(イタリア)
・メスキータ(スペイン)
・ウルネス教会、ボルグン教会(ノルウェー)
・セナンク修道院、シルヴァカーヌ修道院、ル・トロネ修道院(フランス)
・シャルトル大聖堂(フランス)
・ヴォロネツ修道院、スチェヴィツァ修道院(ルーマニア)
<近世編>
・スクロヴェーニ礼拝堂(イタリア)
・ヘルゴット教会、ザンクト・ヤコブ教会(ドイツ)
・サン・ロレンツォ聖堂
・メディチ家礼拝堂
・スレイマーニエ・ジャーミイ、セリミエ・ジャーミイ(トルコ)
<特別編>
メディナ(サウジアラビア)
このイスラム教のメッカに並ぶ聖地のメディナ、写真ではモスク囲む広大な空間(その広さは東京ドームの4倍に相当するそうだ)に、暑さしのぎのための、巨大なアンブレラが設置されています。そのアンブレラ、開くと一辺が25.5mになる正方形。それだけでもスケールの大きさを感じるわけですが、このアンブレラ、実は大型テント構造技術をもつ大阪のメーカーによるものなのだといいます。通常、イスラム教徒でないものは、この宗教施設には入れないがその日本のメーカーの依頼で写真を撮影したという記事がありました。このような場所で、日本の技術が密かに?活かされているとは!なかなか誇らしいものですね。