過去、現在、未来の時間軸が交錯するホラー映画の傑作

映画「シャイニング」(1980年)

■製作年:1980年
■監督:スタンリー・キューブリック
■出演:ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァ、ダニー・ロイド、他

スタンリー・キューブリックの映画「シャイニング」をあらため見てみました。公開時に見ているので40年ぶり?

この映画の公開時は、いわゆるホラー映画がガンガン公開されていたので、どこか正攻法的な部分もあったり、かと思うと、とても抽象的だなと思える部分もあり、そんなに怖くないなと思った印象が有りましたが、年を経て見てみると実によくできた怖い映画だと思いました。

「シャイニング」は、いろいろなところが謎な部分も多いけど、音響効果でビックリさせたり、気持ち悪さでぞっとさせるような、こけおどしではない、じっくり描かれた、じわじわくる怖さ、徐々に狂気に落ちていく怖さがそこに描かれていました。

導入部の音楽はベルリオーズの「幻想交響曲」 、今みると何てぴったりな音楽なんだと。深い山間部を空から俯瞰で撮った映像の素晴らしさ。役者も凄い。狂気を演じるジャック・ニコルソンも、泣きじゃくるシェリー・デュヴァるも、シャイニングの能力を持つダニー少年も、どれも素晴らしい演技をみせてくれます。このシャイニングは配役の妙と言える部分もあるでしょう。この役者らの力がなければ、ここまでの映画になったかはわかなりません。そのぐらい大きな要素を締めているかと思います。

この映画は、基本的に「過去・現在・未来」を象徴した人物に構成されているように思います。狂気の淵へと落ちていくジャック・トランスは、ホテルに巣食う亡霊たちの虜になっていきます。昔にあった家族殺しの残虐事件、そのまま憑依されたかのようになり、自らの家族に斧を持って襲いかかります。最後は、雪の迷路で息絶えますが、ホテルに掲げられていた1921年と書かれたパーティの集合写真にジャック・トランスが映り込んでいるのは、彼が<過去>を象徴した人物であるということでしょう。

一方、妻のウェンディ・トランスは、夫の変化や子供のことが気にかかり、現状をなんとかしたい、しかし、自分にはどうすることもできず、ただただ目の前に起こることに対して自分なりに対処してその場をしのいでいくことになります。なので彼女は<現在>を象徴しているのだと。しかし、最終的には子供を救出し、雪上車でホテルから去ることができるので、何かトラブルが起きた時は、自分なりに対処する行動が必要なんだなと教えられます。

そしてダニー少年は、未来を予知できる能力があり、これから起こり得る惨劇に対して危惧しています。最終的には斧を持って追いかけてきた父トランスを迷路に誘い込み、その裏をかいて自分は迷路から抜け出し、トランスは凍死してしまいます。つまり彼は<未来>を意味していると。
このように、構図的な構成になっていると思いました。

それにしても、この映画の中で一生懸命小説を書いていたと思われたトランスの原稿が、実はそうではなかったとわかるシーン(ここでトランスが狂気の淵に落ちていた実感できるところ)と、トランスが斧でドアをぶち破るシーンはものすごい迫力で、忘れ難い場面となっています。今回「シャイニング」をあらためて見てみて、この作品は映画史に残る傑作と思いました。キューブリックは天才です。

この「シャイニング」には、それを独自に解釈した「ルーム237」という映画があるので、それも見てみようかな。

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