中国、改革開放の闇を描いたフィルムノワール

映画「シャドウプレイ」(2018年)

映画「シャドウプレイ」は、ドキュメンタリー・タッチの臨場感ある映像で展開されます。それゆえ観客に対する説明が不十分。時代や場所が錯誤する。映画も後半になってくるとそれらが1本の線となって見えてくるので、ああそういうことかと、面白くなってくる。思うに前半をどう乗り切って見るかということが言えると思う。事実、私の横にいたお客さんは、途中で出ていきました。たぶん、話がわからないということからでしょう。

私もそんな感じで頭もボヤっとしながら見ていたのですが、後半になると面白くなってきました。この映画、力作だな。でもちょっと力が入りすぎており、観客には不親切かなと思ったり。骨ぶとな映画であることは間違いないのです。

中国の1980年代の改革開放路線により急速に資本主義経済が取り入れられ、不動産バブルが到来する。林立する近代的な高僧ビル群のはざまに旧来からの住居があり、そこだけぽっかりスラム化している。その都市開発をめぐり、地元政府の役人、不動産開発業者、それに絡む女性、そして問題を解明しようとする若き刑事。

急速な市場経済が浸透する中、利権がらみで役人と企業と汚職の構図が広がる。そこに殺人事件が起こり、とても骨太な作品に仕上がっている。どんな社会体制であろうとも、目の前に金儲けのネタが転がっているのがわかるとズルしてそれを手に入れようとするのは、どこでも同じ現象といえそうです。

2016年に映画は完成したものの、当局からの修正を迫られて2019年にやっとめどが立ち公開、中国では第ヒットしたという。今回の公開は、2019年の公開時に検閲されカットされた部分も加えての完全版の上映ということ。中国の映像作家のパワーにびっくりしながら、社会の闇の部分を描き出しているところにも驚きました。勢いを感じざる得ませんでした。

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