自然の奥深さを感じ、深い感動を得た映画

映画「ザリガニが鳴くところ」( 2022年 )

■製作年:2022年
■監督:オリビア・ニューマン
■出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ、テイラー・ジョン・スミス、ハリス・ディキンソン、他

アメリカでベストセラーになっている本を原作にしたこの映画、実はあんまり期待しないで見たのですが、いやいや予想を裏切りメチャクチャ面白かったのです。こうした差異あり観賞後の感覚こそ、映画との出会いの醍醐味と言えそうです。ここ数年、映画館で見た映画の中で一番よかったと感じました。

湿地という自然を舞台に描いているのですが、その自然の描写が素晴らしい。そこに現実にはあり得ないような奇跡のような展開が重なるのですが、その自然に圧倒されながら主人公のカイヤという女性に魅了されます。彼女が子どもの時に母親に去られて悲しみのどん底に落ちながらも地を這うように生きていくそのたくましさ。そこには湿地という大自然の友が彼女の味方をします。

様々な誤解、偏見、思い込みの中で殺人事件とおぼしきことが起こり、カイヤに疑いの目は向けられます。その過程の中、人間の営みの中での矛盾や怒り、悲しみもクローズアップされていきます。

カイヤが女性へと成長すると二人の男性に出会います。一人は自然を愛する優しい男性。しかし、彼はカイヤとの約束をすっぽかしてしまい一度は彼女の信用を失います。もう一人は好奇心のみで近寄った自分本意の男性。その男性は、彼女を結婚しようと言いながら別に婚約者がいました。自分の思うようにならないと暴力で屈せさせようとします。

この勝手な男が火の見櫓から落ちて死んでいたのが発見され、これは偏見の目で見られているカイヤの仕業に違いないと裁判となってしまいますが、良心的な弁護士によりカイヤは無罪となります。

そして、一度は信用を失った自然を愛する男性と寄りを戻し、幸せな結婚生活を送ります。死期を迎えたカイヤ、子供の時に去って行った母親が森の向こうから歩いてきます。お母さん!一瞬子供に帰るカイヤ。それは幻想でした。幸せな?幻想を見ながら息を引き取るカイヤ。ここは涙なしでは見ることができませんでした。

でも映画はここで終わりません。遺品整理をしているとインパクトあるものが、見つかりました。ここでどんでん返しが起こり、いろいろ考えさせられます。それがよかった。

ザリガニが鳴くということはありません。鳴くとは一体何を指しているのだろう、いろいろ考えさせられるし、我々の伺いしれない自然の深みを連想させるような終わりかたでした 。

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