一冊のビジュアルブックができるほどの「ナイトメア・アリ―」、はたして・・・
「ギレルモ・デル・トロのナイトメア・アリ―」(DU BOOK)
今最も注目される映画監督のギレルモ・デル・トロによる「ナイトメア・アリー」、残念ながらアカデミー賞の受賞を逃したものの、個人的にはとても注目される作品と思っています。
この本はディスクユニオンから出ているのですが、映画の公開に併せて作品に関する書籍が刊行されるというのはとても珍しい現象と言えます。ライターがいて翻訳者がいるので、アメリカで刊行されたものを日本でも発売したということなのでしょう。
こうした本が出版されるという現象は、つまり、ギレルモ・デル・トロ監督の新作映画が他の追随を許さない形で注目されている証ということなのでしょう。傑出した個性的な映画監督、それは現代の芸術家としてのトップランナーとも言えます。
しかし残念ながら、私が「ナイトメア・アリー」を観に行った近所の映画館では決して満員というわけではありませんでした。出版されるほど、次回作の注目が高まる監督でさえ映画館は充分な集客ができない。
映像というジャンルは、技術による表現は高度化されクウォリティは上がり、一方でSNSはじめ簡単に撮れるようになった映像が増え益々身近なものになってきている。映像というジャンルがどんどん変化していっているのです。
その中で、多額な予算でつくる映像である映画の今後はどうなっていくのでしょう。映像における作家性というものを、私は失って欲しくはないし、際立った表現とテーマで文学にも似た刺激を与えてほしいそう思たりします。
このビジュルブックを見ていると印象的なシーン、映画ではあっという間に過ぎていくので、その感覚のみが私に残ります。映画の記憶が薄くなっていく中で、その印象の記憶を掘り返し、もう1本の脳内の映画を作り上げる、そんな作業と言えるかもしれません。