映画製作が中断したやり場のない「ことの次第」を描く

映画「ことの次第」(1983年)

■製作年:1983年
■監督:ヴィム・ヴェンダース
■出演:パトリック・ボーショー、サミュエル・フラー、他

ヴィム・ヴェンダースの映画「ことの次第」は、フランシス・フォード・コッポラがプロデュースした映画「ハメット」において監督を請け負ったヴェンダースが、遅々として進まない製作の進行において、トラブり、彼がポルトガルに渡り1本の映画を作ってしまったというエピソードがあるという、その程度の知識がある私なのですが、そうした点を見ても映画製作そのものがテーマとなっているためコッポラへの皮肉、批判が込められているのだろう感じることができる作品です。

近未来のSF映画を作っているらしい映画の製作部隊。しかし資金不足で撮影は中断してしてしまう。俳優やスタッフは撮影で使用していたホテルに宙ぶらりんに滞在することになり、何をするでもなく、それぞれが思い思いの行動に出る。そこには映画は完成するのか?ギャランティは支払われるのか?という疑念が湧き、なんとも気持ちの持ってき場がないということを淡々と描いていきます。

それゆえ、そこにドラマチックな展開もなく、だんだんとむき出しになってくる人々の本性が少しづつ現れてくるという以外に、ヴェンダースの映像は見せないといっていい。その意味でいうと、いわゆる映画らしい映画というのか、我々が求めるハラハラドキドキする面白い映画というのか、そうしたものはあまり感じることができないのです。

ヴェンダースの映画を見るといつも感じるのが映像の一つ一つの素晴らしさ。味わい深くそれは文学的ともいえるのですが、そこにドラマティックな展開は希薄とも言えて・・・。なので「パリ、テキサス」のような映画になると映画史に残るような、他の追随をゆるさないすごい映画になるのですが、少しだけそこから外れると、もどかしい映画になりかねない。どちらかというとこの「ことの次第」もそのような映画と私的には感じてしまったのです。

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