ハードボイルド・タッチの「ハメット」

映画「ハメット」(1982年)

■製作年:1982年
■監督:ヴィム・ヴェンダース
■出演:フレデリック・フォレスト、ピーター・ボイル、マリル・ヘナー、他

あのフランシス・フォード・コッポラがプロデュースし、ヴィム・ヴェンダースが監督を務めた映画に「ハメット」があります。この映画は「血の収穫」「マルタの鷹」といった一連の作品でハードボイルドスタイルを確立した著名な小説家ダシール・ハメットを主人公にした映像です。

ただ、詳しくはわかりませんが、コッポラとヴェンダースの確執があったようで、遅々として製作が進まなかった、そこでヴェンダースは「ことの次第」という別の映画をポルトガルで撮ったといういわくつきの作品です。

映画「ハメット」は、抑えた色調がいかにもハードボイルドな渋さを出していて映像はすばらしいと思います。作家であるハメットが小説を書いていると、その小説の世界が映像として展開するも、現実世界でも似たような事件が起こりハメットがそこに巻き込まれていくという虚実が映画の中でないまぜになり、それが虚としての映画として進行していくという不思議な感覚の映画なのです。

ただ、この時期に撮った「アメリカの友人」もそうなのでしたが、いまいちサスペンスとしての盛り上がりに欠く部分があるように感じました。ヴィム・ヴェンダースの映画は、一つ一つの映像が、ほんとに素晴らしいと感じるのですが、物語をハラハラドキドキと盛り上げていくのは苦手なのかもしれません。

この「ハメット」は一つ一つの映像が、上記にも書いたのですが、いぶし銀と感じる映像なので、ある意味でとても残念な気がします。同じようなハードボイルドな映画としてロマン・ポランスキーの「チャイナタウン」がありますが、そちらと比べるとサスペンス部分でやや見劣りがしてしまう・・・。とても素敵な映画なのですが、とても残念な映画、それがヴィム・ヴェンダースの「ハメット」と私は感じています。

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