100年前、イタリアで起こった“未来派”野郎たち
今から100年ほど前、イタリアで起こり全世界へと飛び火した芸術運動に「未来派」があります。1909年フランスのフィガロ紙に掲載されたイタリアの詩人フィリッポ・マリネッティによる「未来派宣言」。
この後、「未来派絵画技術宣言」(1910年)「未来派彫刻技術宣言」(1912年)「雑音芸術未来派宣言」(1913年)「未来派建築宣言」(1914年)「未来派舞台美術宣言」(1915年)「未来派機械芸術宣言」(1922年)・・・・・・と多くの宣言文が出ました。それらを見ていると、その時代を生きていないのでわかりませんが、かなり勢いがあったのではないでしょうか?
産業革命の影響を受けて都市化が進み一挙に工業化による近代文明の幕開けの時代、過去の否定、伝統の破壊、そして時代の象徴であるかのような機械美、スピード感、ダイナミズム、同時性などに着目し未来派の芸術家たちは理論を形成していきます。この未来派の運動は美術のみならず、建築、演劇、音楽などのジャンルからファッション、生活用品、日用品までが対象となっていき、運動が終息後も、ロシア構成主義やダダイズムといった運動に影響を与えたといいます。
100年経った現代からみても、このどこか近未来を感じさせる未来派の視覚芸術のセンス。しかし、一方で、この未来派はファシズムと近しい存在になり、戦争、愛国主義、無政府主義をたたえ、女性を蔑視をした危険な考え方にも染まっていたようです。
情報革命が起こり、掌の中にコンピュータがおさまり、コミュニケーション手段が飛躍的に発達した今、コロナという不可抗力に近い圧力により、仕事の仕方や経済のありかた、生活様式が急速に変化していっています。デジタル化が遅れていると叫ばれ、5Gを、AIを活用せよ・・・・・・、車の自動運転や民間人が宇宙に行く時代へ。ただそれは、バラ色の未来なのか?
宣言などはありませんが、変化の兆しを見るたびに新しい未来派が起こってきているように、少しだけ感じているのは私だけ?プラスの面とマイナスの面を見極めていかないと、いけないと思います。
F.T.マリネッティ「未来派創立宣言」(一部抜粋)
『行こう,とわたしは言った。行こう、友よ!出発しよう!ついに、神話と神秘的な理想が凌駕された.われわれは、ケンタウロスの誕生に立ち会おうとしているのだ。そしてわれわれはまもなく生まれたての天使が飛翔するのを見るだろう!・・・・・・人生の扉を揺さぶって、蝶番や掛けめがねを試して試してみなくてはならないだろう!・・・・・・出発しよう!さあ、地上には夜明けが訪れたばかり!われわれの千年の闇に最初の戦いを挑む、太陽の赤い剣の輝きに匹敵するものなど何もない・・・・・・』(※「未来派1909-1944」東京新聞・刊より引用)