ヴェンダースの実力がわかる「アメリカ、家族のいる風景」
映画「アメリカ、家族のいる風景」(2005年)
■製作年:2005年
■監督:ヴィム・ヴェンダース
■サム・シェパード、ジェシカ・ラング、ティム・ロス、他
主演のサム・シェパードは、劇作家・脚本家で俳優でもあり、あのヴェンダースの傑作「パリ、テキサス」の脚本を担当しています。なのでこの映画は味わい深い映画となっています。それと共演のジャシカ・ラングは当時一緒に住んでいたとか。
物語は、映画のロケからはじまります。西部劇俳優のハワード・スペンス、しかし人気は過去の影響で現在は落ちつぶれてしまっていて、突如、撮影現場から逃げだしてしまいます。音信不通であった母のもとを訪れるのですが、この時の母親の立ち振る舞い、息子への対応が素晴らしく描かれていて、私はとても印象に残りました。息子も老いているけど母はもっと老いている。しかし、どんなに歳をとっても母と息子、その描き方が心に響くのです。
主人公のハワードは若い頃、やりたい放題で、自分の知らないところで子を身籠らせた女がいるということを知り、その女性の住む街へ会いに出かけていきます。酒場で働く女、そこで歌っている男が自分の息子と知ります。突然の父親の来訪で荒れる息子・・・。この映画は、どの場面も安定ししっかりした描き方をしていて、ヴェンダースの実力というものを感じないでいられません。超一流の演出家だなと思います。
とても楽しく、また、考えさせられながら、映画らしい映画でした。ただ、テーマ自体が、あるある系とも言えるのでインパクトという点は少し弱かったかなと思いました。が、出来は上々の作品です。じわじわと胸に染み入る秀作でした。