20億年後の未来からのメッセージ「最後にして最初の人類」

映画「最後にして最初の人類」(2020年)

■製作年:2020年
■監督:ヨハン・ヨハンソン
■ナレーション:ティルダ・スウィントン

映画「最後にして最初の人類」は、かなり野心的な作品と言えます。映画というジャンルに入るのでしょうが、それは娯楽というよりはアート、芸術作品のジャンルでしょう。映画館で上映されるよりも美術館といった場所でこそが相応しいという作品です。

なぜなら、北欧の作曲家ヨハン・ヨハンソンが音楽と監督を担当し、アカデミー助演女優賞などを受賞しているティルダ・スウィントンによるナレーションで、あのアーサー・C・クラークにも影響を与えたというオラフ・ステープルドンのSF小説「最後にして最初の人類」をテキストに、音×映像×文学が織りなす映像叙事詩と言える作品だからです。

映し出される映像は旧ユーゴスラビアの共産主義時代に作られたという、未来的で抽象的な石のモニュメント群「スポメニック」。このようなモニュメントがあったこと、私は全く知りませんでした。映画とは新しい情報を得る一つの手段でもあるわけですね。

で、このモニュメントが、またすごく映像に独特な雰囲気を出しています。なんという造形なんだろうと驚きも隠せません。 この不思議な造形物「スポメニック」とはセルビア・クロアチア語やスロヴェニア語で「記念碑」という意味を持つそうです。この近未来的なSF的要素が強いモニュメント群は、第2次世界大戦中の枢軸国軍による占領の恐怖と、占領軍から勝ち取った勝利を示すため、1960年代から1990年代にかけて制作されたといいます。

カメラはモノクローム映像でこれらの驚異的なモニュメント群を、独特のそしてイメージを喚起させる幻想的な映像を、ただただひたすら映し出していくのみ。そこに朗読と音楽が響き合うように織りなすのですが、ある意味で単調な映像ゆえ、だんだんと睡魔に一瞬襲われるようになるのですが、作品のクォリティの完成度が素晴らしく、20億年先の人類からのメッセージとともに、覚醒と弛緩を繰り返します(笑)

作品は20億年先の人類からのメッセージ。それは原作のSF小説がベースになっています。20億年後、人類は環境変化とともに、現在の私たちの姿とは形を変化させていることが伺えます。最後の人類とは、その未来の時代、太陽の消滅により人類が破滅してしまうというのです。太陽の危機、そこには人類の有史以来の太陽信仰を否が応でも認識せざる得ない。

映像にあった未来の人類からのメッセージ、「あなたたちを助けます・・・わたしたちも助けてほしいのです」は、とても意味深だ。超未来から現代への時空を超えた語りかけ、それは今を変えれば未来も変わることができるというのか?

コロナ禍、賛否の中で東京オリンピックが開催されたのですが、その感動を祭典に終わらせずに、世界中の人々が互いをリスペクトしながら協力し合い平和な世の中を作っていって欲しいとこの不思議な映像を見て願うばかりでした・・・。

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