幻の映画、玉三郎が演じた泉鏡花の「夜叉ケ池」

映画「夜叉ケ池」(1979年)

■製作年:1979年
■監督:篠田正浩
■出演:坂東玉三郎、加藤剛、山崎努、他

泉鏡花が原作(戯曲)で、坂東玉三郎が主演し篠田正浩が監督した映画「夜叉ケ池」。長くDVD化もされることなく幻の映画とされた作品。その理由は、私はわからないのですが、1979年の公開当時、私は映画館でこの映画を観ているのでした。ただ当時は、泉鏡花や玉三郎の魅力をわからずじまい、ただただ洪水の場面を記憶しているだけ。しかし、40年の歳月を経て劇場公開と相成った。

40歳代になって私は泉鏡花の魅力を発見した。鏡花の本を読み、映像化されたもの、舞台化されたもの、歌舞伎となったものを観てきた。特に映画に主演した坂東玉三郎は泉鏡花の作品を意欲的に演出、演技しており「夜叉ケ池」「天守物語」「高野聖」「海神別荘」など歌舞伎座で見るのが楽しみでした。しかし、再見できないのが映画「夜叉ケ池」だったので、突然の公開にはびっくりしました。

ということで40年ぶりのこの映画。こんなだったんだと思う所も多々あり、冨田勲のシンセサイザーの音楽は当時斬新だったんだろうなと。そして若き玉三郎の演技も新鮮なのです。夜叉ケ池の主であり龍神の白雪姫、そしてヒロインの百合の二役を演じ、女形が演じるのは、やはり当時としては斬新だったんだろうと、想像するのです。

そして、なんといっても圧巻は、南米のイグアスの滝をロケし洪水後の世界を描いた所、こんな場所に釣鐘を作ったのか?と思うのですが、ここまでくるとそれはノアの洪水なみ。

原作でもそうなのですが、日照り続きで村が疲弊し、夜叉ケ池の龍神に生贄を捧げ雨を降らそうと百合が犠牲になりかけ、それにより洪水が発生する引き金となるのですが、明治文豪・泉鏡花は近代化が進む時代とは言え、魑魅魍魎の見えない世界をテーマにした作品が多い。そこで生贄という設定が出てくるのは、少し前まで日本でも生贄ということをやっていたということになるわけで、調べると明治時代にもそうしたことは、どうやらやられていたらしい・・・。

泉鏡花ということもあり、いろいろな思いがある映画なのだけれども映画館での上映以外に、DVD化されていたりWOWOWで放送されたりとしたのは嬉しいかぎり。

Follow me!